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技 術
  「鋳物砂用固体酸触媒の開発」 (第136会報)
日本新金属株式会社
栗原 正崇

 1.緒言
 ヘテロポリ酸は過塩素酸や硫酸よりも大きな酸強度を有していることから、酸触媒として有機物の水和・重合・脱水、エステル化などの反応に広く用いられている。近年注目されている積層造形技術としてバインダージェット法による鋳造用鋳型の作製に酸触媒が使用されており、鋳物砂を硬化、造形するために添加される自硬性樹脂と酸触媒との反応により鋳型の造形を行っている。従来、液体の酸触媒が用いられているが、造形後の鋳型表面が湿潤し、樹脂を十分に硬化させることができず、造形不良が生じる場合があり、生産性の低下が問題となっている。

 本報では上記課題を解決するため、固体ヘテロポリ酸を用いた鋳物砂用新規固体酸触媒の開発の取り組み内容について報告する。

2. 実験方法
 種々の酸触媒の候補材(ヘテロポリ酸含む)を添加した鋳物砂のpH 測定により樹脂の硬化反応への影響を確認し、適用可能となる材種を調査、選定した。また、樹脂の硬化速度や造形後の鋳型強度に影響すると考えられる酸触媒の結晶粒子サイズ制御について、スプレードライヤーを用いて噴霧方法、条件を検討し、最適なサイズのヘテロポリ酸結晶を作製した。また作製したヘテロポリ酸を鋳物砂に分散させ、バインダージェット造形した砂型について評価した。

図1.ケイタングステン酸結晶のSEM 像

3.結果・考察
 鋳物砂との混合状態で測定したpH が基準値を満たしたことに加え、鋳造の高温雰囲気下での有害分解物の発生の有無など環境への影響を考慮し、ケイタングステン酸を選定した。また、スプレードライヤーによる乾燥・晶出方法を適正化し、平均粒径が約0.8μm の微細な結晶のケイタングステン酸を作製した。

 本開発品を鋳物砂用の固体酸触媒として使用することで鋳物砂への高分散化により、バインダージェット法による鋳型造形時の不良を抑えることができ、生産性の大幅な改善に繋がった。

4. 結言
 ケイタングステン酸の結晶粒径をスプレードライヤーによる乾燥・晶出技術を用いて微細化させることで、鋳物砂への高分散化を実現した固体酸触媒の開発に成功した。本開発品の採用により、鋳型造形時の不良抑制や生産性改善によるコストダウンが期待できる。

図2.造形した砂型例
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