What is Tungsten? タングステンとは
Features 特長
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高温に強い(高融点)
タングステンは融点が3380℃と金属単体の中では最も融点が高い金属です。
その特長を活かし、各種光源・熱源用のフィラメント・電極や遮断器用の電気接点、スポット溶接用電極、X線管の陽極などで使用されています。 -
重い(高比重)
タングステンの比重は19.3 g/cm3と大きく、鉄の約2.5倍重い金属です。
その特長を活かし、ウエイト部品や放射線の遮へい材としても使用されています。 -
熱変形に強い(低熱膨張係数)
タングステンは熱膨張係数が小さいため高温下でも形状安定性に優れています。
その特長を活かし、高温炉、半導体製造装置の構造部材等として使用されています。 -
強度が高い(高弾性係数)
タングステンは強度が高く変形しにくい金属でもあります。
その特長を活かし、カテーテル・ガイドワイヤー、半導体検査用プローブカード等で使用されています。
Applications 用途
私たちの生活に欠かせない様々なものにタングステンは使われています。
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交通・運輸
・自動車
クラクション(ホーン)用の電気接点/車両電装溶接用の電極/自動車のクランク・バランスシャフト用のウエイト部品
・船舶
集魚灯用のフィラメント(電極)
・鉄道
電流遮断器用の電気接点
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電子機器
・パソコン/スマートフォン
電子デバイスの電気特性検査用のコンタクトプローブ/集積回路基板用配線材料の拡散防止膜
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エネルギー・資源
・変電設備/配電設備
低圧~高圧遮断機用の電気接点
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医療機器
・カテーテル/ガイドワイヤー
ブレーディングチューブ用の補強体、電気手術用の電極
・医療装置
CTスキャン用のコリメータ部品/放射線の遮へい材/シンチレーター用の粉末
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家電・照明
・照明機器
各種光源/熱源用のフィラメント/電極
・空気清浄機
コロナ放電用のワイヤー
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航空・宇宙
・人工衛星
アンテナ用のメッシュ/高出力高周波デバイス用の放熱基板
・飛行機
航空機用のウエイト部品/手荷物検査装置用の遮へい材
Ores and mines 鉱石・鉱山
タングステン鉱石は、世界の全ての大陸で存在が確認されているほど、世界中で広範囲に存在しています。
その中でも、中国は世界最大のタングステン資源埋蔵国で、最大の単一埋蔵箇所の存在も報告されています。
タングステン鉱石埋蔵国
世界のタングステン鉱石埋蔵主要国|2023年生産量・埋蔵量
国 | 2023年生産量 | 国 | 推定+確定埋蔵量 | ||
重量 (ton) |
比率 | 重量 (ton) |
比率 | ||
中国 | 63,000 | 81% | 中国 | 2,300,000 | 52% |
---|---|---|---|---|---|
ベトナム | 3,500 | 4% | 豪州 | 570,000 | 13% |
ロシア | 2,000 | 3% | ロシア | 400,000 | 9% |
北朝鮮 | 1,700 | 2% | ベトナム | 74,000 | 2% |
スペイン | 1,500 | 2% | スペイン | 66,000 | 2% |
ボリビア | 1,500 | 2% | 北朝鮮 | 29,000 | 1% |
ルワンダ | 1,400 | 2% | オーストリア | 10,000 | 0% |
オーストリア | 910 | 1% | ポルトガル | 4,000 | 0% |
豪州 | 800 | 1% | その他 | 950,000 | 22% |
ポルトガル | 500 | 1% | ボリビア | NA | NA |
その他 | 1,100 | 1% | ルワンダ | NA | NA |
合計 | 78,000 | 100% | 合計 | 4,400,000 | 100% |
- ※NA=関連データ入手不可
- ※上記生産量には鉱石由来のみを表示しております。スクラップ由来は含まれません。
ー Assignments ー
資源開発に
ついての課題
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01.いくつもの事前準備が必要
開発を進める前に本格的な試掘を実施し、粗鉱品位や不純物、埋蔵量の特定が行われます。
試掘にて開発投資実施に値すると判断された場合、資源開発企業は採算性を示した資料をもとに金融機関などから必要な資金を確保することで、ようやく開発に着手できるようになります。
また、開発に際して事前に政府機関等から環境アセスメント報告書の提出と開発許認可の取得や、開発予定地域に先住民等が暮らしている場合、コミュニティに対する補償や鉱山開発・操業に関連した雇用機会の提供等も求められます。 -
02.膨大な設備投資
立地によっては、鉱山の操業に必要となる電気・水・道路等のインフラ整備、多くの場合地下坑道で採掘される原鉱石を地上へ運搬し、粉砕・選別するための設備投資や、選鉱処理に使用された水や薬剤、選鉱工程で排出される残渣を貯留するための設備投資が必要になります。
このようなインフラ整備の段階から関与が必要となる案件は「グリーンフィールド案件」と呼ばれ、その開発には少なくとも日本円で五百億円前後の巨額な資金が必要と言われています。
資金調達、採算性を考慮すると、新規開発鉱山・休止鉱山等を操業可能にすることがいかに困難な取り組みかということが想像できます。 -
03.タングステン製品のリサイクル
近年ではESG、SDGs等との関連で、企業でも事業活動における天然資源(自然資本)の開発や加工により自然環境に与える影響を抑制しようとする取り組みが広がりつつあります。タングステン資源の開発・利用についてもその持続可能性を考えざるを得ません。
環境への取り組みについて
この課題に対する一つの答えとして、タングステンを含有する様々な使用済み製品を日本国内でリサイクルし、資源循環する仕組みを広げることが重要となります。
当工業会会員企業各社も、限りある貴重なタングステン資源の循環利用への取り組みを推進しています。関連情報は当ホームページでもご覧いただけますので、ぜひご利用下さい。
History 歴史
01.ウルフラム(Wolfram)
ウルフラマイトはタングステン生産にとって商業的に重要な鉱物の1つで、中世 (16世紀)ドイツのザクセン・ボヘミア地方エルツ山地の錫鉱山労働者は、錫鉱石によく付随する鉱物について報告しました。経験から、この鉱物の存在により製錬中に錫の収量が減少することがわかっていました。今日、この鉱物はタングステン生産にとって商業的に重要な鉱物の1つであるウルフラマイトであることがわかっています。
「ゲオルギウス・アグリコラは、1546年出版の著書「化石の自然について」で、この新しい化石(Spuma-Lupi)について初めて報告しました。錫の溶融物の表面に泡が現れ、貴重な錫を留めた精錬炉に重い堆積物が形成されました。『それは錫を引き裂き、狼が羊をむさぼり食うようにそれをむさぼり食う』と、当時の象徴的な言葉で同時代の人は書いています。鉱夫たちは、この厄介な鉱石に「ヴォルフフラム」「ヴォルフォルム」「ヴォルフルムブ」「ヴォルフシャル」(黒色で毛深い外観のため)などのドイツ語のニックネームを付けました。
02.タングステン(Tungsten)
18世紀には地質学と鉱物学が一般科学に発展し、様々な石が検査のために収集されました。ウプサラのアクセル・フレドリック・クロンシュテット教授は、スウェーデン全土から重い石を受け取りました。重い石はスウェーデン語で『タング(重い)』『ステン(石)』と呼ばれます。
1781年、カール・ヴィルヘルム・シェーレは、ビスベルク鉄鉱山の重い石から、『未知の土』を抽出し、ビスベルク・タングステンと名付けました。彼はこの新しい化合物をタングステン酸と呼び、酸化タングステンの発見者とされています。彼の発見を称えて、タングステン生産のためのもう1つの重要な鉱物 (鉄マンガン重石以外) は、彼の名に因みシーライト(Scheelite)・灰重石(かいじゅうせき)と呼ばれています。
ウプサラのトルベルン・ベルグマン教授は、得られたタングステン酸を木炭で還元して金属を得る方法を提案し彼自身は他のことに忙しく、実証実験は行いませんでした。
03.元素の発見
同じ頃、1781/1782年にスペインの貴族、フアン・ホセ・デ・デルヒャールがベルグマン教授とともに冶金化学を学び、鉱物タングステンに関する研究についての情報を収集しました。
1783年にスペインに戻ったフアン・ホセは、ザクセン州ジンヴァルトの錫鉱山から採掘されたタングステンの一種を分析し、それが新しい鉄とマンガンの酸塩であることを示しました。また、タングステンにはシェーレがタングステンから得た酸と同じ酸が含まれていると結論付けました。その後、彼は師であるベルグマン教授の勧めに従って、炭で加熱して酸化物を新しい金属に還元しました。
04.初期のタングステン利用
その後、ますます多くの科学者が新しい化学元素とその化合物を研究するようになりました。しかし、金属の価格は依然として非常に高く、有望な用途発見にはまだ時期が熟していませんでした。
1847年、技術者のロバート オックスランド (1820–1899) に特許が与えられました。これには、タングステン酸ナトリウムの調製、タングステン酸の形成、油、タール、木炭による金属形態への還元が含まれていました。
この研究は、現代のタングステン化学における重要な一歩となり、工業化への道を開いたのです。しかし、タングステンはまだ少し珍しいものでした。
05.鉄鋼におけるタングステンの利用
最初のタングステン含有鋼は1858年に特許が取得され、これが1868年に最初の自己硬化鋼につながりました。
最大20%のタングステンを添加した高速度鋼は、1900年にパリ万国博覧会で初めて展示され、20世紀初頭のエンジニアリングの実践に革命をもたらしました。このような鋼 (テイラー鋼とホワイト鋼) は、今日でも世界中のほぼすべての機械工場で使用されています。
06.電球におけるタングステンフィラメントの利用
19世紀末、アメリカのトーマス・アルバ・エジソンの発明とヨーロッパのヴェルナー・シーメンスの研究に基づく電気照明の出現により、電球のフィラメントとしてタングステンに新たな産業利用の機会がもたらされました。アレクサンダー・ジャストとフランツ・ハナマンは、1904年に「噴射式」タングステンフィラメントの製造の特許を取得しました (BP: No. 23,899)。1911年まで、ヨーロッパとアメリカのほとんどの電球にはこのようなフィラメントが使用されていました。
このランプは、炭素フィラメントランプよりも大幅に多くの光を発し、必要なエネルギーは約3分の1でした。本当のブレークスルーは、ウィリアム・デイビッド・クーリッジが1909年に米国のゼネラル・エレクトリック社で、今日、粉末冶金と呼ばれるプロセスで延性タングステンを製造する特許を取得したことでした。
07.工具における炭化タングステンの利用
ダイヤモンドのような硬さを持ちながら靭性も向上した引き抜きダイスを製造することが、1920年代の超硬合金開発の原動力でした。
これが、1923年にタングステンの硬さとコバルトの靭性を組み合わせた材料の発明につながりました。ドイツのオスラム研究グループが特許を申請し、今日でも超硬合金またはハードメタルと呼ばれる材料の誕生となりました。当時は、最も楽観的な人でさえ、工具業界でこの材料が大きな進歩を遂げるとは誰も想像していませんでした。
フリードリヒ・クルップAGは、1927年に「ダイヤモンドのような」を意味する WIDIA (WIe DIAmant) というブランドで、この新材料を工具材料として販売した最初の企業でした。第二次世界大戦後、経済成長の過程で巨大な市場が開かれ、超硬合金は工具材料や建設部品として産業の発展に貢献しました。
08.機械加工におけるタングステンの利用
今日では、ほとんどの高性能工具にタングステンが含まれているため、タングステンは工具に利用される元素と言えます。
タングステンは、1900年という早い時期に鋼を優れた工具材料にし、性能を劇的に向上させました。タングステンは、炭素とともに、炭化タングステンとして、1923年の発明以来、工具材料として選ばれてきた超硬合金または超硬合金の主成分です。
超硬合金を酸化アルミニウム (1974年)、炭化チタン (1969年)、窒化チタン (1970年)、ダイヤモンド (1980年代以降) の薄膜層でコーティングするなど、いくつかの技術的改良により、工具の形状の最適化やこれらすべての組み合わせ (つまり、多層コーティング、材料化合物など)と同様に、性能がさらに向上しました。
Related Standards 関連規格
タンモリ関係JIS一覧表
規格番号 | 規格名称 | 制定日 | 最新改正日 |
H1402 | タングステン粉及びタングステンカーバイド粉の分析方法 | ’67-02-01 | ’01-01-20 |
---|---|---|---|
H1403 | タングステン材料の分析方法 | ’87-10-01 | ’01-01-20 |
H1404 | モリブデン材料の分析方法 | ’87-10-01 | ’01-01-20 |
H1405 | トリエーテッドタングステン材料の分析方法 | ’87-10-01 | ’16-11-21 |
H2116 | タングステン粉及びタングステンカーバイド粉 | ’62-06-01 | ’02-01-20 |
H4460 | 照明及び電子機器用のタングステン及びモリブデン材料の試験通則 | ’64-07-01 | ’02-03-20 |
H4461 | 照明及び電子機器用のタングステン線 | ’64-07-01 | ’02-03-20 |
H4463 | 照明及び電子機器用のトリエーテッドタングステン線及び棒 | ’64-07-01 | ’02-03-20 |
M8128 | 鉱石中のタングステン定量方法 | ’52-11-25 | ’08-07-20 |
Z3233 | イナートガスアーク溶接並びにプラズマ切断及び溶接用タングステン電極 | ’63-08-01 | ’01-04-20 |
タンモリ工業会規格(TMIAS)
2023年、TMIAS標準の改正を行いました。
規格番号 | 規格名称 | 制定日 | 最新改正日 |
TMIAS0001 | タングステン粉及びモリブデン分析方法 | ’95-04-01 | ’23-03-24 |
---|---|---|---|
TMIAS0002 | アンモニウムパラタングステート,アンモニウムディモリブデート及びアンモニウムへプタモリブデート分析方法 | ’10-12-24 | - |
TMIAS0101 | 粉末特性試験方法 | ’95-04-01 | ’23-03-24 |
TMIAS0201 | タングステン・モリブデン線及び棒の試験方法 | ’99-12-24 | ’23-03-24 |
TMIAS0301 | モリブデン板及び箔の試験方法 | ’99-12-24 | ’23-03-24 |
TMIAS1101 | タングステン粉及びタングステンカーバイド粉 | ’71-11-01 | ’23-03-24 |
TMIAS1201 | タングステン線及び棒 | ’73-05-01 | ’23-03-24 |
TMIAS1202 | 照明及び電子機器用トリエーテッドタングステン線及び棒 | ’95-04-01 | ’23-03-24 |
TMIAS2101 | モリブデン粉 | ’73-05-01 | ’23-03-24 |
TMIAS2201 | モリブデン線及び棒 | ’73-05-01 | ’23-03-24 |
TMIAS2301 | モリブデン板及び箔 | ’73-05-01 | ’23-03-24 |
工業会規格ご入用の方は実費にて頒布いたしております。