What is Molybdenum? モリブデンとは

モリブデン鉱石

Features 特長

モリブデンはタングステンより融点や弾性係数は低いですが、タングステンよりも低比重、加工がしやすいといった特長があります。

  • 高温に強い(高融点)

    モリブデンは融点が2630℃とタングステンよりは低いですが、鉄などの一般的な金属よりも耐熱性のある金属です。
    その特長を活かし、半導体装置、ガラス溶解炉や高温炉の電極、ヒーターや反射板等として使用されています。

  • 熱変形に強い(低熱膨張係数)

    モリブデンは半導体材料と熱膨張係数が近い金属です。
    その特長を活かし、半導体デバイスのヒートシンクなどで使用されています。

  • 強度が高い(高弾性係数)

    モリブデンもタングステン同様、強度が高く変形しにくい金属です。
    その特長を活かし、X線管の陽極等で使用されています。

Applications 用途

私たちの生活に欠かせない様々なものにモリブデンは使われています。

  • 交通・運輸

    ・自動車

    クラクション(ホーン)用の電気接点/車両電装溶接用の電極/自動車のクランク・バランスシャフト用のウエイト部品

    ・船舶

    集魚灯用のフィラメント(電極)

    ・鉄道

    電流遮断器用の電気接点

  • 電子機器

    ・パソコン/スマートフォン

    電子デバイスの電気特性検査用のコンタクトプローブ/集積回路基板用配線材料の拡散防止膜

  • エネルギー・資源

    ・変電設備/配電設備

    低圧~高圧遮断機用の電気接点

  • 医療機器

    ・カテーテル/ガイドワイヤー

    ブレーディングチューブ用の補強体、電気手術用の電極

    ・医療装置

    CTスキャン用のコリメータ部品/放射線の遮へい材/シンチレーター用の粉末

  • 家電・照明

    ・照明機器

    各種光源/熱源用のフィラメント/電極

    ・空気清浄機

    コロナ放電用のワイヤー

  • 航空・宇宙

    ・人工衛星

    アンテナ用のメッシュ/高出力高周波デバイス用の放熱基板

    ・飛行機

    航空機用のウエイト部品/手荷物検査装置用の遮へい材

Ores and mines 鉱石・鉱山

モリブデン鉱石は、ユーラシア大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸に分布しています。
中でも、中国・チリ・ペルー・米国の生産・埋蔵量が多く、チリだけでも多数の鉱山が存在しています。

モリブデン鉱石埋蔵国

タングステン鉱石埋蔵国分布図 飛行機 船

世界のモリブデン鉱石埋蔵主要国|2023年生産量・埋蔵量

2023年生産量 推定+確定埋蔵量
重量
(ton)
比率 重量
(1,000ton)
比率
中国 110,000 42% 中国 5,800 39%
チリ 46,000 18% 米国 3,500 23%
ペルー 37,000 14% ペルー 1,500 10%
米国 34,000 13% チリ 1,400 9%
メキシコ 15,000 6% ロシア 1,100 7%
アルメニア 7,800 3% 豪州 690 5%
イラン 3,700 1% アルメニア 150 1%
モンゴル 3,100 1% メキシコ 130 1%
ウズベキスタン 1,700 1% アルゼンチン 100 1%
ロシア 1,700 1% カナダ 72 0%
その他 2,600 1% その他 558 4%
合計 262,600 100% 合計 15,000 100%
  • ※上記生産量には鉱石由来のみを表示しております。スクラップ由来は含まれません。

ー Assignments ー 資源開発に
ついての課題

  • モリブデン原鉱石が産出される2種の鉱山

    モリブデンの原鉱石は、硫化物(硫化モリブデン)の形で賦存することが一般的です。

    • プライマリー鉱山・・・モリブデン含有量が比較的高い単味鉱石を産出
    • バイプロ鉱山・・・銅鉱石等の副産物としてモリブデン原鉱石を産出
  • 01.安定生産への懸念

    近年、長年に渡る採掘の結果として鉱石品位の低下が進み、プライマリー鉱山から産出されるモリブデン鉱石の生産量が徐々に減少傾向をたどり、代わってバイプロ鉱山から産出されるモリブデン鉱石の生産量が主流を占めるようになっています。
    バイプロ鉱山での生産の操業コストは、銅鉱石等の採掘コストによってカバーされる部分があり、相対的に安価なコストでの生産が期待できる一方で、銅の市況変動によって副産物のモリブデン鉱石の操業が影響を受ける面があります
    また、新たな銅鉱山の開発は、南米等を中心に、自然環境がより厳しい案件が多くなると見込まれており、開発資金の増加を受け、将来に渡って安定した銅鉱山開発(=副産モリブデン鉱石の安定生産)が進むか否かが懸念されております。

  • 02.プライマリー鉱山からバイプロ鉱山へ

    産出されたモリブデン原鉱石は、ロースターと呼ばれる装置で酸化焙焼され、粗酸化モリブデン鉱(酸化モリブデン)として流通し、主にステンレス鋼や特殊鋼添加用に消費されます。
    一方、触媒用や金属粉末・材料用に消費される場合、粗酸化モリブデン鉱を更に化学的プロセスで精製し、高純度酸化物や各種モリブデン化合物の状態で消費されることが多いです。
    これらの用途に適した品位の粗酸化モリブデン鉱は従来プライマリー鉱山からの供給に大きく依存していましたが、それらの鉱山からの供給量減少を受け、バイプロ鉱山で産出される原鉱石由来の粗酸化モリブデン鉱を精製し、利用する対応へ徐々に切り替わっています

History 歴史

01.モリブドス

古代ギリシャ・ローマの頃から鉛の様な輝きを持つ軟らかい鉱物をモリブドスと呼んでおり、鉛や黒鉛との区別は不明瞭でした。

02.元素の発見

1778年、スウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレによって独立の元素であることがわかり、その原鉱石モリブデナイト(輝水鉛鉱MoS₂)からモリブデンと命名されました。

03.金属として単離

1782年、初めて金属として単離されました。

04.初期のモリブデン利用

19世紀中は主として実験室で扱われただけで、第一次世界大戦までは金属としての需要はほとんどありませんでした。

05.92-96%純度のモリブデン金属の製造

1893年、ドイツの化学者たちがモリブデン酸カルシウムの還元によって92-96%純度のモリブデン金属を製造しました。

06.初めての添加元素としての使用

1894年、初めて鋼への添加元素として使用されました。

07.自硬性のモリブデン工具鋼の発売

1898年、自硬性のモリブデン工具鋼が発売されました。

08.フィラメントサポートとしてのモリブデン利用

1910年、白熱電球のフィラメントサポートとして実用に供されました。
第一次世界大戦でドイツが長距離砲の砲身に「モリブデン鋼」を使用しているとの報告が連合軍情報部に入り、アメリカはその情報の解明とともに、モリブデンの鉄や鋼に対する効果の研究を急ぎました。まもなくこの情報は誤りであることが判明したましたが、これによって研究が促進されることになりました。

09.アーク鋳造法の適用

1946年、アーク鋳造法が初めてモリブデンに適応されました。

10.モリブデン-マンガン法の開発

1950年、モリブデン-マンガン法がセラミックスと金属のろう付けに開発されました。

11.TZM合金の開発

1954年、TZM合金(Mo-0.5Ti-0.3Zr-0.03C)がClimax社により開発されました。

12.レニウム添加による延性改善の発見

1955年、モリブデンへのレニウム添加による延性改善が発見されました。

13.Mo-TZC合金の開発

1960年、Mo-TZC合金がGE社により開発されました。

14.高強度モリブデン基合金の開発

1960年代、高強度モリブデン基合金を開発するため(1)加工強化(2)固溶強化(3)析出強化の3種類の金属学的強化機構が利用されました。
最初に実用化された合金は、Mo-0.5%Ti合金です。

Related Standards 関連規格

タンモリ関係JIS一覧表

規格番号 規格名称 制定日 最新改正日
H1402 タングステン粉及びタングステンカーバイド粉の分析方法 ’67-02-01 ’01-01-20
H1403 タングステン材料の分析方法 ’87-10-01 ’01-01-20
H1404 モリブデン材料の分析方法 ’87-10-01 ’01-01-20
H1405 トリエーテッドタングステン材料の分析方法 ’87-10-01 ’16-11-21
H2116 タングステン粉及びタングステンカーバイド粉 ’62-06-01 ’02-01-20
H4460 照明及び電子機器用のタングステン及びモリブデン材料の試験通則 ’64-07-01 ’02-03-20
H4461 照明及び電子機器用のタングステン線 ’64-07-01 ’02-03-20
H4463 照明及び電子機器用のトリエーテッドタングステン線及び棒 ’64-07-01 ’02-03-20
M8128 鉱石中のタングステン定量方法 ’52-11-25 ’08-07-20
Z3233 イナートガスアーク溶接並びにプラズマ切断及び溶接用タングステン電極 ’63-08-01 ’01-04-20

タンモリ工業会規格(TMIAS)

2023年、TMIAS標準の改正を行いました。

規格番号 規格名称 制定日 最新改正日
TMIAS0001 タングステン粉及びモリブデン分析方法 ’95-04-01 ’23-03-24
TMIAS0002 アンモニウムパラタングステート,アンモニウムディモリブデート及びアンモニウムへプタモリブデート分析方法 ’10-12-24 -
TMIAS0101 粉末特性試験方法 ’95-04-01 ’23-03-24
TMIAS0201 タングステン・モリブデン線及び棒の試験方法 ’99-12-24 ’23-03-24
TMIAS0301 モリブデン板及び箔の試験方法 ’99-12-24 ’23-03-24
TMIAS1101 タングステン粉及びタングステンカーバイド粉 ’71-11-01 ’23-03-24
TMIAS1201 タングステン線及び棒 ’73-05-01 ’23-03-24
TMIAS1202 照明及び電子機器用トリエーテッドタングステン線及び棒 ’95-04-01 ’23-03-24
TMIAS2101 モリブデン粉 ’73-05-01 ’23-03-24
TMIAS2201 モリブデン線及び棒 ’73-05-01 ’23-03-24
TMIAS2301 モリブデン板及び箔 ’73-05-01 ’23-03-24

工業会規格ご入用の方は実費にて頒布いたしております。