1)はじめに
自動車市場やインフラ市場の拡大に伴いNDB(タングステンやモリブデンと銅を直接接合する当社独自の技術)を用いた製品の需要増が見込まれている。NDB製品の製造は基山工場のみで行っていたが、生産能力増強を目的に飯塚工場では同敷地内にあった建屋を改修し、新工場の稼働を開始した。本稿では、本年度から稼働開始した新工場とNDBに使用する新焼結炉について紹介する。
2)新建屋(電極製品工場)の紹介
飯塚工場は1970年の操業以来、タングステンとモリブデンの製品を取り扱っている。棒・板・加工品および電極製品は操業時に建設された建屋を中心に敷地内に点在する建屋で製造がなされ、建物の老朽化が問題となっていた。そのため、比較的新しかった旧還元工場を改修して新工場(以下、電極製品工場)とし、敷地内に点在していた生産設備の集約を行った。加えて、後述するプッシャー式高温焼結炉などの新設備も導入することで、タングステンおよびモリブデンのチップ製品からCuと接合したNDB製品、複雑形状への加工までが可能となった。
3)プッシャー式高温焼結炉の紹介
今回導入した新型のプッシャー式高温焼結炉は、最高温度1330℃、雰囲気制御が可能となっており、大きく3つの特徴が挙げられる。
①処理効率の向上
ヒーターゾーンを従来炉より長くすることで送り速度を大きくすることができ、処理量は従来の2倍を実現した。さらに消費電力の低減も確認されている。
②メンテナンス頻度の低減
従来は炉芯管にヒーター線を直接巻く構造となっており、年に1~2回のヒーター線交換が発生していた。交換には2週間程度の稼働停止期間が必要となるため、生産に影響が出るケースがあった。ヒーターを熱板式にすることでヒーターの長寿命化が期待できる。
③ 作業性の改善
本焼結炉では操作パネル、入口側コンベア、出口側コンベアが全て近い位置にあり、作業者がトレイの出し入れと炉の操作を1箇所で行えるようにしている。また、入口側コンベアと出口側コンベアは従来よりも並べられるトレイの数を増やすことで、夜間勤務が不要となり作業者への負担を大幅に軽減できた。
これら3つの特徴により、今回新たに導入した電気炉では高いエンゲージメントとサステナビリティを実現している。さらに、本焼結炉では温度やガス流量、消費電力等のパラメータや投入している製品情報をリアルタイムで確認・記録することができる。将来的には記録したデータを一括管理し、製造条件の最適化や不具合防止などDX化にも活用したい。

