年初に大地震で被災された能登半島で線状降水帯による豪雨が発生し、再び大きな災害が発生しました。地震災害復興中の地域で多数の方が避難所生活を余儀なくされている中言葉もありませんが、被災された方に謹んでお見舞い申し上げます。
今回の豪雨は台風からの熱帯低気圧により日本海で発生した線状降水帯が能登半島に断続的に雨をもたらしたものです。これまで大きな豪雨災害といえば西日本の太平洋側の地域で発生する頻度が圧倒的でした。しかし、この数年東北の日本海側等での豪雨災害が増えています。世界的にも温暖化の影響が大きくなっており、世界各地でこれまでなかったような豪雨災害のニュースが流れています。とくに夏場近海の海水温が高くなり、台風の勢力が維持されたまま上陸するケースが増えています。日本近海は世界の中でも特に海面温度の上昇率が大きくなっているようで、気象庁の資料によると、日本近海における2023年までの100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.28℃/100年。世界全体の平均上昇率が+0.61℃ですのでほぼ倍の数字です。特に日本海は著しく水温が上昇しています。今回も9月としては水温がいまだに高い日本海から供給される湿った空気により線状降水帯が発生しました。ちなみに「線状降水帯」は近年よく耳にするようになりましたが、近年になって発生するようになったわけではなく、発生頻度の増加とともに2021年くらいから気象庁が頻繁に使用するようになったそうです。
今年大宰府市は年間猛暑日日数62日という日本記録をつくりましたが、9月末でやっと長かった暑い夏の終わりを感じる朝夕になってきました。この数年35℃をこえる猛暑日も確実に増えてきており夏が長くなったような気がしますので、実際の日数を調べてみました。福岡の昨年2023年の夏日+真夏日+猛暑日の合計日数は155+89+17=261日です。50年前1973年は132+64+1=197日ですので年間で64日、ほぼ2か月夏が長くなっています。これは単年の比較ですが、前後数年の平均的な数字をみてもほぼ同じです。確実に夏とよんでいい季節は長くなっており、日本が誇る四季の風雅な暮らしもこのままでは十分堪能できなくなるのではないかと心配されます。今年の中秋の名月は9月17日でしたが、福岡の当日の最高気温は34.7℃、最低気温は26.5℃でした。天気もよく月がよく見えるというニュースのライブ映像を見て月をみようと戸外に出ましたが、ムッとする熱気がまだ残っておりとても中秋を感じることができませんでした。(ちなみに1974年9月17日福岡の最高気温は26.3℃、最低気温は15.3℃です!)
この暑い夏による影響は農作物、海産物にも影響がでてきていますが、私が一番身近に感じることは蝉の声です。私が蝉取りをしていた子供の頃は、アブラゼミがとても多く、クマゼミはほとんど手にすることがありませんでした。時々鳴き声が聞こえる程度でしたので、私にとってクマゼミはあこがれの垂涎の的でした。それが近年の夏聞こえてくるのはクマゼミの大合唱。あのアブラゼミが少数派になっています。確かに地域差というものもありますが、関西の方も同じことを言われていましたので、これは温暖化の影響ではないかと思い調べてみました。クマゼミが近年幅をきかせているのは間違いないようで、その理由は諸説あるようです。クマゼミが環境の変化に強い蝉であるというざっくりした説から、地球温暖化によってクマゼミの孵化が雨の多い梅雨の時期に早まった結果、雨により地面が柔らかい時期に孵化することで生存率が高くなったという説(詳細な研究論文があります)、蝉は気温によって精力的に鳴く種類が違ってくる(ニイニイゼミ23~29℃、アブラゼミ25~30℃、クマゼミ30~35℃)説などがあります。いずれの説も温暖化を否定するものでありません。
気候の変動により経済的にも大きな影響を受けている市場もあります。9月も下旬になるとさすがに店頭には秋冬の衣料品が並んでいます。しかし通り行く人はTシャツ、タンクトップですから、まだまだ購買意欲が高まらないのは明らかです。衣料業界は夏物衣料の利幅が小さいそうですので、年間で2か月も夏が長くなると間違いなく大きな影響を受けているのではないでしょうか。今後私たちの市場もこれまで考えもしなかった影響を受けるかもしれません。経験したことがない暑い夏はすでに特別なことではなく、ニューノーマルと考えざるを得ません。私たちタンモリ業界もクマゼミのように環境の変化に追随できる強い体質を維持できるように、次の変化をいち早くキャッチできるよう心掛けたいものです。