私が岩崎電気(以降I社)の会長時代に三和電気のゴルフコンペに誘われて参加した際に、宮崎社長から渡邊さんは会長を退任されたらその後はどの様に過ごされますか?と聞かれたので、家庭菜園とゴルフ三昧ですと答えたら、うちの会社のお手伝いをしてもらえませんか?と言われてどうしようかなと考え、三和電気の業容を整理してみました。宮崎社長の企業拡大に対しての意欲と熱意を強く感じそのお手伝いが出来ればと感じたのと、私がI社で何十年も在籍していた生産技術部門ではHIDランプ(High Intensity Discharge Lamps) に使用されるW,Mo材の加工には苦労したことで大変馴染みが有ったので、その経験を活かせて技術面でもお手伝い出来そうな思いになり社外取締役として引き受けることになりました。役割は大体、経営関係が40%、技術関係が60%といったところです。
宮崎社長は、話し上手のみならず聞き上手のキャラクターの持ち主ですので、色々な提案をさせてもらいました。先ずは、会社経営の体裁を整える意味で定款見直し、経営会議のルーチン化実施、決裁プロセスの体系つくりなどの提案を前向きに取り組んで頂きました。今では、この体制であれば会社規模が拡大しても基本は変えることなく運用できると思います。 I社の時と比べ三和電気の特徴を何点か挙げてみると、情報の共有化が非常に速いです。例えば、顧客やサプライヤーを訪問した際や、Web会議などを行った後は各自が当日か翌日には会議録を作成し配信してくれるので、社内での情報の共有化が迅速です。問題が有れば緊急会議を招集したり、上位者が直ぐに指示を出すことが出来ています。I社の時は、関係部署では情報を共有出来ているがその情報を吸い上げるのにどうしても時間がかかってしまうのと、バイアスがかかり内容が歪みやすいです。ただ、今までの三和電気の短所は会議を行ってもいつまでに誰が行うかを曖昧にしているところが有るのでノンデリ(Non Delivery)体質からの脱却をしようと働きかけた結果、上位者が意識して指示するようになり大分改善されたと思います。
ここで、情報の共有化による迅速な対応の例を紹介します。社長の強い思い入れで、細いタングステンを使ったある製品をベトナムの日系企業に委託生産をすることになり、ベンチ型機械を送り込み生産を始めたが、オペレータ(作業者)のスキル差で稼働率や良品率に大きく差が生じ品質も安定しませんでした。技術者を何人も何回も送り込んで解決しようと試みましたがうまく行かず泥沼化しそうでした。オペレーションの不安定原因はオペレータのスキルに頼る設備だからです。誰でも同じような品質のものが出来る機械にしないと海外では通用しない事を数多く経験した私の例(米国、台湾、ベルギー、ハンガリー、中国など)を紹介し、一旦日本に設備を引き揚げて改造しようと提案して社長以下皆さんが納得し、誰でも出来る機械にすることをコンセプトに改造する事にしました。改造後、日本でのテストでは全く経験のない入社直後パート社員が直ぐに良品を作れることが実現できました。その後、改造機を現地に送り殆ど問題なく稼働しています。今まで経験などない初めての海外生産において問題が出るなど当然ですが、問題の様子を逐一報告開示する体制が功を奏したと言えます。
また、三和電気の魅力は、何と言っても年齢層の幅が広い事です。大手の会社はどこも同じ傾向ですが60歳ぐらいで役職を外れ65歳で定年退職を迎えますが、当社は勤労意欲が有りハイパフォーマーなら役職年齢を伸ばして活躍してもらっています。70歳を超えても唯一無二のスキルの持ち主は何人も活躍されているし、同じ職場で老若男女の混在でワイワイ楽しくやっています。職場によっては50歳以上もの年齢差が有り言わば昔の大家族のようで、年寄りと子供や孫が同居しているようです。
しかしながら、何分にも人財不足ですので新しい事業に取り組もうとしても殆どの皆さんがプロジェクトを兼務しているので余裕がなく悩みの種です。私は、冗談半分にこれだと田舎芝居の役者みたいで、演目が変わると役者が衣装替え化粧直しをして演技しているようだと言ってます。それで、最近は積極的に内部留保で許される範囲でM&Aに取り組むことにしています。当社製品や技術との親和性がありそうな会社や当社にとって弱い所を補完してくれそうな会社です。M&Aの最大の利点は開発時間の短縮と人財の確保が図れることです。
当社では、毎年期初や新年に数回の全体会議を行っています。その席で私の話す時間を設けてもらっていますが、テーマは「マインド(Mind)と健康(Health)」です。マインドは前述のノンデリ体質の脱却などですが、健康についての話の方が比率は高いです。特に限られた人数、人財で運用していますから病気が大敵です。もしキーパーソンが病気で長欠にでもなると会社にとっての大きな痛手のみならず本人や家族にとっても大きなダメージとなります。私は医者ではないので単に聞いた話を伝えただけでは説得力がないので色々国内だけでなく海外も含めた情報収集をしたり文献など調べたりした事を話すようにしています。
健康で老若男女混在で和気あいあいの会社を目指せれば、私の役目は多少なりとも活かせられるかなと思い、趣味に没頭するボケ老人なるのはもう少し先になりそうです。

