明けましておめでとうございます。
新春を迎え、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。また、日頃より当工業会に対し、格別のご高配とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。新年にあたり、所感を述べさせていただきます。
昨年を振り返ると、経済と気候の二大潮流が世界を揺るがした一年だったと感じます。 国際経済の動向に目を向けると、2025年はトランプ氏の二期目就任を契機に、米国がいわゆる「トランプ関税」を強化し、国際貿易の緊張が一層高まりました。それに対し、中国は報復関税や戦略資源の輸出規制を強化し、サプライチェーンの分断が進みました。当工業会が関わるタングステンやモリブデンも輸出規制の対象となり、リードタイムの長期化、在庫戦略の再設計、調達ソースの多元化が不可避となり、価格の高騰や調達不安が続いております。今年の年初からは、日本への両用物資の輸出管理強化も発表されており、供給網へのさらなる影響が懸念されます。
さらに、トランプ氏による国際機関からの離脱(国連人権理事会、UNESCO、WHOなど)は、国際的な衛生や人道支援体制に多くの課題をもたらしました。特に、パリ協定からの脱退による気候変動対策の足踏みは、CO2削減の努力に深刻な影響を与えているといえます。
国内では、環境問題がより顕著な課題として浮き彫りになりました。都市近郊まで「熊被害」が広がり、被害者数が過去最高を記録しました。この背景には、過疎化や耕作放棄地の増加、さらには気候変動による餌資源の変動が挙げられます。地域の安全確保と生態系保全を両立させた取り組みが求められています。
また、気象異常の影響は農業にも深刻なダメージを与えました。コメ不足への対応として備蓄米の放出や「古古古米」「古古古古米」の流通が注目を集めたほどです。その要因の一つとして、収量や品質の低下が気象異常によるものであることは複数のデータからも確認されています。さらに、春と秋の期間が短くなる「二季化」が進行し、この40年間で夏の期間が約3週間延びており、これには海面水温の上昇が影響しているという研究結果も報告されています。
これらの課題への対応策として注目されるのが、2024年にEUで発効された重要原材料法(CRMA: Critical Raw Materials Act)です。この法律は供給網の安定化を目的に、重要資源の多様化・リサイクル・効率化・代替品開発を強化するもので、その具体的な目標として、2030年までに原材料消費量の10%を域内採掘で賄い、40%を域内で加工し、25%を域内リサイクルで確保することが掲げられています。この一連の取り組みは資源循環の重要性を強調しており、私たちの産業界にとっても参考になるモデルと言えます。
当工業会が主に取り扱うタングステンやモリブデンは、その経済的重要性や代替困難性から、重要原材料として認識されています。しかしながら、調達ルートや需要分野についての調査報告はあるものの、リサイクルの普及状況についての実態調査はまだ十分ではありません。そのため、まずはリサイクルの現状把握から着手し、最終的には設計段階から「資源の取り出しやすさ」「分別のしやすさ」に配慮した“Design for Circularity”(循環型設計)を目指し、国内での資源循環を強化する取り組みを進めていければと考えています。
循環型社会の実現に向けた取り組みは、価格や納期の不安定さを吸収し環境負荷を軽減すると共に、競争力の強化にも寄与するものと考えます。以前にも申しあげたことがありますが、例えば、タングステンの採掘・精錬・粉末冶金の過程で生じるCO2排出量を、リサイクルを活用することで、製品1トンあたり約21トンから10トン程度に削減できる試算も報告されています。このような努力は、地球環境の持続可能性の維持だけでなく、地域社会の安心安全をもたらす基盤にもなるでしょう。業界全体が団結し、循環型社会構築の必要性を訴え、改善を進めることが私たちの責務ではないでしょうか。
最後になりますが、皆様のますますのご発展とご活躍を心より祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。