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薄膜ターゲット用粗粒 TiS2粉末の開発

日本新金属株式会社
笹川 純一

第140号会報(2025年7月15日発行)

#技術紹介

1. 緒言

TiSi2は、切削工具や金型に耐酸化性、耐摩耗性を付与する薄膜ターゲット材料として使用されており、蒸着時のパーティクル、ドロップレット、異常放電を抑制することが出来るターゲットが望まれている。その為、原料粉末として好適なTiSi2粉末の開発を行うと共に量産技術確立へ取り組んだ。

 

2. 目標(粉末特性)

①粗粒かつ球状のTiSi2粉末。
②O値及びFe値の低減。
③ターゲット焼結時においてクラックの原因とされるTiSi2中の遊離Siの低減。

 

3. アプローチ方法

①原料の選定および合成条件検討。
②不純物についてはSi原料メーカーと協議し、製造条件を検討。
③Si原料品質の適正化によりTiSi2合成温度を検討。

 

4. 結果・成果

①粗粒かつ球状のTiSi2粉末を得るために、使用原料として粗粒かつ球状のTi粉末と、粗粒のSi粉末を選定し、合成条件を検討した結果、発熱反応による異形状化を抑制するために2段階の熱処理を行うことで粗粒かつ球状のTiSi2粉末が得られた。【図1】
②にSi粉末についてはメーカーとの製法改良により、微粉が少なくO値、Fe値が低減されたSi粉末が得られた。
③TiSi2中の遊離Siについては、改良されたSi原料粉末に合わせた合成条件の最適化により遊離Siが減少した。【図2】

 

5. まとめ

薄膜ターゲット用TiSi2粉末の開発に取り組み、原料の選定・改良や合成条件の最適化により、所望の特性を得ることができた。また、量産技術を確立することができ、現状では開発当初より約1.5倍の販売増となった。
【特許番号】特許第6415361号(P6415361)
 
以上
 
 

粗粒TiSi2のSEM像
図1:粗粒TiSi2のSEM像

 
遊離Siが低減したTiSi2のXRD
図2:遊離Siが低減したTiSi2のXRD

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