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会報

愛犬と地元散歩で思うこと

岳石電気株式会社
取締役統括部長 木村 誠

第141号会報(2025年10月15日発行)

#役員寄稿

私が勤める岳石電気株式会社は、神奈川県西部・丹沢山系の麓に位置する秦野市に本社を構える会社です。1978年の創業以来、照明部品を中心に製造してきましたが、近年では医療、分析、半導体分野への部品提供に加え、宇宙分野への取り組みも進んでいます。

 

そんな自然豊かな盆地にある会社から、数年後には当社の部品が宇宙へ飛び立つかもしれない――そう思うと、夢のある仕事に携わっているのだと実感します。

 

さて、その秦野市から南西へ約20kmの場所に、私が生まれ育ち、今も暮らしている小田原市があります。南側に海、他の三方を山に囲まれたこの町は、歴史と文化が息づく、どこか懐かしくてゆったりとした雰囲気を持っています。コロナ禍で一時は減っていた観光客も戻り、駅前や観光地は再び賑わいを見せています。

 

そんな地元・小田原で、週末に愛犬と散歩をするようになったのは、今から5年ほど前のこと。若い頃はサッカーに夢中で、週末は仲間と汗を流すのが何よりの楽しみでしたが、30代半ばで膝を痛めてからは、運動とはすっかり縁遠くなってしまいました。

 

転機となったのは、愛犬との出会いです。元気いっぱいの彼女はとても運動量が多く、気分が乗っている日は2時間ほど歩くことも珍しくありません。時には小走りになることもあり、それが心地よく感じられて、長時間でも楽しく散歩ができています。

 

自宅から20分ほど歩くと、箱根駅伝のコースとしても知られる国道1号線に出られます。さらに5分ほど進むと、小田原の海(御幸ヶ浜)に到着。西湘バイパスの高架下のトンネルを抜けると、潮風が頬を撫で、なんとも言えない開放感に包まれます。

 

海岸近くには、小田原名産のかまぼこ屋が並ぶ「かまぼこ通り」があり、かまぼこやさつま揚げといった練り物をつまみに、日本酒の飲み比べを楽しむ観光客の姿も見られます。美味しそうだなと横目で眺めていると、ついつい歩くペースが遅くなりますが、愛犬にグイッと引っ張られてしまいます。そうなると、散歩に連れていってもらっている私の立場としては、逆らえません(笑)。

 

そして、散歩コースとして外せないのが小田原城です。城址公園やお堀、隣接する二宮神社の周辺では、梅・桜・藤・紫陽花・ハスなど四季折々の花が咲き誇り、歩くたびに季節の移ろいを感じることができます。

 

ところで、皆さんは二宮尊徳をご存じでしょうか?二宮神社の御祭神として祀られている二宮尊徳翁は、二宮金次郎の名の方が、小学校の銅像で馴染み深いかもしれませんね。彼は「報徳思想」を唱え、経済活動と道徳の調和を説いた思想家であり、現代の企業経営や信用組合の設立にも大きな影響を与えたと言われています。

 

小田原出身の歴史的人物であり、二宮神社だけでなく、報徳博物館、生家に隣接する尊徳記念館、そして「きんじろうカフェ」といった施設もあります。

 

そんな金次郎像ですが、最近では老朽化などを理由に撤去されるケースが増えているようです。薪を背負って本を読む姿が「歩きスマホ」を連想させるとか、「児童労働」を推奨しているように見えるなど、現代の価値観にそぐわないという声もあるそうです。

 

像の姿や形だけが注目され、本来の“勤勉・倹約・思いやり”の象徴としての意味が忘れられてしまうのは、時代の流れとはいえ、何とも寂しい気持ちになります。

 

この寄稿文を書きながら、ふと「母校の小学校には金次郎像があっただろうか?」と気になり、後日確認に行ってみました。すると、「積小為大」(小さなことの積み重ねが大きな成果につながる)の石碑とともに、綺麗な状態の金次郎像がそこにありました。

 

幼少期に過ごした小学校の石碑を前に、あらためて二宮尊徳の思想に触れ、自分の損得だけでなく、利他の心や尊徳の精神を考えさせられました。

 

最後に、桜の季節に愛犬と小田原城へ散歩に行ったときのこと。城の石垣を眺めていたら、前日に会社で見ていた、石垣状に広がるタングステンの結晶構造をふと思い出し……その瞬間、愛犬にグイッと引っ張られ、いつものように“私が散歩される”時間が続くのでした。

 

これからも愛犬との散歩を通じて、小田原の風景を楽しみながら、地元の魅力を再発見し、健康も維持していけたらと思います。

 
小田原城

小田原城

 
二宮金次郎像

二宮金次郎像
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