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技  術
  「ナノWC 粉の開発」   (第127号会報)
日本新金属株式会社
出原 稔久

 1. 緒言
 弊社ではこれまで超硬工具の特性改良を目的に、主原料である炭化タングステン(WC)粉の微粒化について開発を行ってきており、タングステン酸アンモニウム溶液出発の前駆体から熱炭素反応による直接炭化法(直炭法)を用いてBET値が3 m2/g、換算粒径で100 ~ 200nm となる超微粒WC 粉(WC-FX)の量産化を確立した。また、WC はその水素親和性や電子構造から白金触媒の代替材料としての研究が行われており、より微粒かつ分散性の良いナノWC 粉(100nm 未満)が求められている。

 従来から行われてきた「か焼」「還元」「炭化」といったWCの各製造工程において、反応温度や雰囲気、中間生成物を制御することで、WC 粉の微粒化について検討した。図1 に示すようにWO3 の水素気流中での還元反応では、WO2.72、WO2 等の低級酸化物を経由してα -W が生成されるが、還元温度が550℃以下で生成されるβ -W(W3O)は非常に微細な粉末が生成されることが報告さている。[1] 本研究では、β -W を経由したナノWC 粉の合成プロセスについて報告する。
       
 2.実験方法
 出発原料に34m2/g のWO3 粉を用い、水素気流中にて500~ 700℃の範囲で還元処理を行い、得られた粉末の物性について調査した。また、還元後の超微細なβ -W 粉を酸化させることなく炭化する方法について検討を行い、予めWO3 とカーボンを混合した粉末を出発原料とし、還元・炭化反応がどのように進行するか調査した。

 3.結果・考察
 水素気流中500℃で還元処理を行った粉末のX 線回折結果からβ -W の生成が確認され、得られたβ -W 粉はBET 値が約32m2/g(換算粒径:10 ~ 20nm)の微細な粉末であった。次に、WO3 とカーボンの混合粉を水素気流中、500℃で還元処理することで、β -W を形成させ、続けて1000℃で加熱することでWC を生成した。得られたWC 粉はBET 値が約12m2/g(換算粒径:30 ~ 40nm)であり、図2 に示すように直炭法で得られるWC-FX よりも微粒であった。
       
 4.まとめ・今後の展望
 今回、W、WC 粉の合成プロセスについて検討し、β -W を経由しWC を生成する新規合成プロセスによりナノWC 粉を合成することができた。今後、触媒としての特性評価や、粒子の表面修飾による大気中での安定性向上などの研究を進めることで、新たなWC の用途拡大が期待される。

 [1] Erik Lassner and Wolf-Dieter Schubert (1999) Tungsten,New York: Kluwer cademic/Plenum.
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