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巻頭言
   「ご挨拶」 (第124号会報)
 株式会社アライドマテリアル
代表取締役社長 山縣 一夫
 皆様こんにちは。このたび、前任者に代わりタンモリ工業会の理事を引き継ぐことになりました。今後、当工業会の発展のために微力ながら精一杯取り組んで参りますので、皆様のご指導、ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

 初めに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、罹患された方々に心よりお見舞い申し上げます。また、医療従事者の皆様に深く感謝申し上げます。コロナ禍はこの一年あまりの間に四つの波となって押し寄せ、会員の皆様にも十分ご挨拶できないまま失礼しております。私は昨年6 月に弊社に参りましたが、丁度コロナ禍による一回目の緊急事態宣言が明けたものの、景況が大きく悪化し底が見えない状況でした。

 お客様訪問も儘ならず、専ら製造拠点( 酒田、富山、播磨) を回りながら、自社の製品・製造プロセスの勉強と、業績の立て直しに取り組んで参りました。一方で昨年の秋から自動車に続き、工具、医療、半導体市場等を中心に徐々に上向いて来ています。また漸く、待望のワクチン接種が始まり、今後徐々にコロナ禍も収束し、世の中の景気も本格的に回復していくことと期待しております。

 私は社会人となってから35 年あまり、超硬合金ビジネスに携わってきました。まず超硬合金、セラミックコーティング、サーメット等の材料開発と生産技術開発に10 数年、その後、企画・マーケティング、海外販売拠点設立等に10 年余り従事。丁度リーマンショック時に帰国し、超硬素材、ダイヤ、CBN等も含めた製品開発に加え、原料の完成粉末、タングステンの精錬・リサイクル等、川下から川上の仕事を経験して来ました。
 
 入社後最初に配属された部署で、超硬合金とそれにセラミック皮膜を施したコーティング材料の開発を担当し、タングステンと出会いました。ご存じの通り、超硬合金は炭化タングステン(WC) を主成分として、コバルトをバインダーとした複合材料で、1923 年にドイツのオスラム社が開発して以来、切削工具、耐摩工具や鉱山工具等で利用され、年々改良が加えられ、工作機械の進化とも相まって、ものづくりの加工能率向上に大きく貢献して来ました。この100 年弱の歴史の中で、開発の主役はコーティング、ダイヤやCBN 等に移って来ましたが、そのベースを支える超硬合金も、日々進化して来ています。様々な添加元素はもとより、WC やコバルトの粒度、組織にも改良が加えられ、例えば過酷な用途の一つである、プリント基板穴あけ用のドリルには、サブミクロンオーダーの均一で欠陥の無い高強度で高硬度の最新材料が適用されています。こうした進化は、常に新しい原料、プロセスや設備の開発が鍵となっています。近年では、分析・解析技術の進歩で原子レベルの観察や、計算科学やシミュレーション技術の活用が進んでおり、今後も更なる性能・品質の向上や、新材料の開発に期待します。

 川上側の開発では、特に尖閣問題を契機に、タングステン資源の安定確保という点から、鉱石からの精錬、還元、炭化工程の一連の量産安定化、使いこなしを進めることにより、中国依存度を低減することに取り組んで来ました。実現には中国以外で高品質で安定した様々な原料を調達し、不純物量の低減、粒度ばらつきや、ミクロな組織、品質を一層管理しながら製品として作りこむことが求められました。また鉱石に比べ貴重なタングステンを2 桁以上多く含むスクラップからのリサイクルを推進しその比率を高めていくことが、サステナブルな社会に向け重要となってきます。スクラップに含まれるコバルトもEV 用電池や耐熱合金等にも用いられる反面、資源が政情不安定なアフリカ等に集中しており、国際相場も乱高下しており、このリサイクル技術とそのビジネスフローの確立も重要です。 今後も、これまでの下流から上流までの技術、ビジネスに携わってきた経験を活かし、お客様のニーズに合わせた高品質な原料・製品を安定して供給していくことに注力していく所存です。

 少し話は変わりますが、社会人生活の中で転機となったのが、イタリアでの駐在経験です。販売拠点の設立、新市場開拓から、特約店対策、労務問題、訴訟対応等、初めて経験することばかりでした。イタリアと言えば、多くの世界遺産に代表される歴史と風光明媚な観光地、美味しい料理・ワイン等を思い浮かべられる方が多いと思いますが、官公庁や金融機関等での諸手続きや、ビジネスの面では大変苦労しました。当時の松原亘子駐イタリア全権大使から、「イタリアでのビジネスは忍耐、忍耐、また忍耐」と言われた言葉を痛感。お陰様でかなり忍耐力が鍛えられました。時間( 納期) を守らない、約束を守らない、少しでも安く値切る、コネが重要といった慣行の中、なかなか思うように販路も広がらず、売り上げも伸びず苦戦しました。

 しかし、そのような中でも挫けず、高い品質を維持し、納期を守り、正直・誠実できめ細かな日本的サービスを愚直に実施することによって、徐々に信頼を得ることができ、ビジネスを拡大することができました。これが日本のものづくりが、世界と戦い、生き残って行くための一つのポイントだと思います。コストの安い中国を始めとする競争相手と如何に差別化し、また様々な垣根をどのように乗り越えるのか。土俵をずらして我々日本の製品をいかに選んでもらうのか、これからはタングステン、モリブデンの世界で皆様と一緒に知恵を出していきたいと考えます。
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