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技  術
  「耐熱衝撃タングステン材の開発と核融合炉部材への展開」(第124号会報)
株式会社アライドマテリアル
 角倉 孝典

 1. 緒言
 近年、石油や石炭などの化石燃料から脱却することを目的とした「脱炭素」に向けた活動が活発となっている。例えば、太陽光、水力および風力など太陽由来のエネルギーが挙げられるが、これらのエネルギーは広く薄く地球全体に分布しているためエネルギーの総量は大きくても、効率的に収集することができない問題がある。その中で核融合反応を利用したエネルギーは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出せず、かつその燃料は海水中に豊富に存在することから、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する恒久的なエネルギーとして注目されている。

 「地上の太陽」と呼ばれる核融合エネルギーによる発電の研究1940 年代から開始され、実験炉を建設し科学技術的に成立することを実証する段階に入っている。この国際熱核融合実験炉は、「ITER( イーター)」と呼ばれ、我が国を含む7 極( 日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インド) の国際協力によって、現在、南フランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設中である。ITERの中核は、ドーナツ型の超高温プラズマとなっており、このプラズマは高さが約7m、外径約16 m、体積約800m3 という⼤規模なものである。プラズマの下部には、プラズマからの高い熱流や粒子の流れを受けとめるダイバータという機器がある。このダイバータは、プラズマを維持する上で不要な不純物を排出・除去するための機器で、ダイバータ表面は、最高で2300℃に達すると言われており、それに耐えうる材料として高融点金属のタングステン( 以下、W) が採用されている。

 ITER で安定した実証実験を行うためには、W には耐熱衝撃性が要求される。筆者らは、ITER に加え、日本国内のみならず欧米を始めとした世界の核融合研究の促進ならびに商業発電の早期実現に貢献していくことを目的として、粉末冶金法の技術を応用し、耐熱衝撃タングステン材を開発した。本稿では、その取組み内容について報告する。

 2. ダイバータ⽤W モノブロックの開発と評価試験
 W 材はW 粉末をプレス・焼結したものを熱間で塑性加工することにより作製される。⼀般的に塑性加工直後のW 材は繊維状の加工組織を呈しているが、1200℃を超える温度で再結晶を開始する。熱負荷による耐熱衝撃を向上させるためには、2000℃を超える温度に晒された時の再結晶粒成長を可能な限り抑制することが有効であると考えられる。当社の開発W 材は、2300℃での超高温熱処理後でも従来製法によるW 材に比べて微細な再結晶粒を維持していた。この開発W 材を用いて、核融合炉の環境を模擬した条件で熱負荷試験を行うためのW モノブロックを製作した。

 開発W 材から図1のようなダイバータに使用されるW モノブロックを作製した。これにCu-Cr-Zr 系合金の冷却管をロウ付けすることにより図2 に示す小型の熱負荷試験体を作製した。評価は、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構が保有する高熱負荷試験装置(JEBIS) にて実施した。その結果、開発W 材は割れが観察されず優れた耐熱衝撃性を示し、ダイバータに適した性能を示した。
  

 その後、プロトタイプ評価を行うために、特殊ステンレス(XM-19) を接合した脚付きW モノブロック( 図3) も開発した。これら当社W モノブロックを使用したプラズマ対向ユニットを用い、ITER 機構および国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構の立会いのもと、ロシアのエフレモフ研究所にあるIDTF(ITER Divertor Test Facility) にて熱負荷試験を行った( 図4)。実機を想定した評価においてもJEBIS 同様に開発W 材は割れず優れた耐熱衝撃性を示し、ITER 機構および国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構からITER ダイバータ用 W 材として認証を受けた。

  

 3. まとめと今後の展望
 夢のエネルギーと言われ、脱炭素が実現可能な核融合エネルギーの実験炉として建設中のITER のダイバータに使用されるW 材を開発した。当社では、この開発W 材を使用したモノブロックを日本が担当するダイバータの外側ターゲット用に供給している。

 今後は、日本だけでなく欧州の内側ターゲット、さらにはITER の先にある発電実証を目的とした核融合原型炉(Demonstration Power Station, DEMO 炉) に向けて研究を進めている日本・欧米を始めとした研究機関等へ当社材料を展開し、地球規模での大きな課題であるエネルギー問題に対し「核融合炉の実用化」という切り口で貢献していく所存である。
 
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