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技  術
   「二次電池用WO粉の開発」(第123号会報)
日本新金属株式会社

出原 稔久

 1. 緒言
三酸化タングステン(WO3)はタングステン精製工程における中間生成物であるが、WO3の持つ特異な性質から、光触媒や機能性ガラスなどといった多用途に使用されている。また、WO3はReO3型類似の3次元空洞ネットワークを持つ結晶構造をしており、その空洞に種々の金属イオンを取りこみ、MxWO3 (x<1、M=Li、Na、K…etc.)で表記される、いわゆるタングステンブロンズを形成する。これらの化合物は、(1)式に示すように電荷の移動によりイオンを吸収・脱離する特性を持っている。
   x M+ + WO3 + x e- ⇔ MxWO3 ・・・(1)

 この反応はニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった、二次電池の電極反応と類似のものであり、WO3が二次電池の電極材料として適用できることを示している。近年、WO3を既存の二次電池に添加することで、その電池特性が改善される事例が複数報告されており、二次電池への添加剤としてのWO3の需要が高まりつつある。一方で、材料中に含まれる微小な金属異物が電池の短絡や発火・爆発の原因となるため、非常に厳密な異物管理が求められている。そこで本件では、種々の電池の製造プロセスに対応するため、WO3の物性制御方法及び、金属異物対策等により、二次電池用WO3粉を開発した内容について報告する。

2.実験方法
 WO3の熱処理条件がその物性 (BET値、粒度、結晶性 etc.)に及ぼす影響を調査し、種々の物性のWO3に関して溶液親和性を調査した。また、タングステン精製工程における湿式精錬プロセスから、APT晶出後からか焼工程までの粉体プロセスにおける各工程での金属異物について調査し、既存設備の改良や環境・工程管理、除鉄装置をはじめとした異物混入対策における効果の検証を行った。

3.結果および考察
 図1にWO3中の単斜晶の割合と熱処理温度についての関係を示す。熱処理温度と単斜晶の割合が単純な相関関係ではないことが示された。また、WO3のBET値とアルカリ溶液への溶解性の調査から、親和反応に適用するWO3には最適なBET値があることが示された。種々の生産工程の中で、特にか焼プロセスで炉体からの鉄系異物の混入が最も影響が大きかったが、最適な除鉄装置を用いることで、許容範囲内まで異物を除去できることが示された。以上の結果をもとに、顧客の要望に合わせた物性制御が可能な二次電池用WO3粉を製品化した。
            

               
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