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役員寄稿
  「豊の国 秋田」 (第122号会報)
   日本新金属株式会社
取締役 秋田工場長
岩本 賢治

  私が秋田に赴任して5年が経過しましたが、その間に私が感じた秋田の魅力と印象を紹介させていただきます。
 
 秋田と聞かれて皆様はどの様な印象をお持ちでしょうか?東北地方、お米の産地、かまくら、なまはげ、温泉、日本酒、田沢湖、鉱山、等々といったところではないでしょうか。私も出張では何度か来ていましたが、本当のところ私の認識もこの程度でした。ただ、1993年に放送された大河ドラマ“炎立つ”を見て、平安時代から鎌倉時代にかけて京にも匹敵する文化がこの東北の地に存在していたことに驚きを受けたことを思い出されます。

 この私が2016年2月1日付けで秋田工場への異動が決まり、真冬の秋田市に着任しました。住まいが道路沿いであったため早朝からの除雪作業の喧騒で目が覚める毎日でした。最初は路線バスで通勤していましたが、冬の路線バスはバス停での待ち時間が寒く、また、バスの便数も少ないことから、中古車を手に入れました。それからは、休日の度に県内を動き回ってきました。

 秋田の四季折々の自然や地元の食、日本酒、そして日帰り温泉を楽しんできました。秋田は鉱山資源に恵まれ、農林業も盛んであったことから、江戸時代は東北随一の豊かな地域であったと言われています。秋田には風光明媚な地勢に加え、夏の秋田の竿燈祭り、鹿角の花輪ばやしや冬の男鹿のなまはげ、湯沢の犬っこまつりなど伝統行事が其々の地域で継承されています。

 食の分野では、豊富な米の収穫量と寒冷降雪、良質な水といった環境は「清酒」「味噌」「しょっつる」「漬物」などの発酵食品文化を生み出してきました。比内地鶏の歯ごたえと出汁が楽しめる「きりたんぽ鍋」やハタハタのエキスと具がたっぷりの「しょっつる鍋」は秋田を代表する郷土料理です。江戸時代、西廻り航路で上方と繋がっていたことから、文化や人の交流では、江戸よりも京都、大阪と深くかかわっていました。

 こうした歴史的経緯から服装、言葉遣いがきめ細やかという風土を育んだと言われています。秋田は東北の中でも豊かな地域であったという経緯から、秋田の県民は良く言えば「おおらか」、悪く言えば「場当たり」と指摘されています。三方を山に囲まれ、一方は海に面しているなど地理的特性もあって多くの地域と積極的に交流・連携するチャレンジ精神に欠けるといった県民性はどちらかというと安定志向が強い傾向にあります。そして「津軽のじょっぱり、秋田のえふりこき」とのたとえが示すようにハングリー精神に欠け、見栄っ張りな土地柄とも言われています。

 これは、人口10万人当たりの理髪・美容院の件数が日本一であり、加えて新車保有率が高いランクにあることからも窺えます。これも豊かな地域であった歴史の現れでしょうか。秋田の豊かさを象徴する一つに豊かな地下資源の存在があります。秋田の金属鉱山は8世紀ころに遡ると言われ、平泉文化が栄えた12世紀には盛んに開発されました。

 秋田県鉱山誌によれば、これまでに秋田で125の鉱山が開発されたと言われています。この名残りが弊社も加入しています一般財団法人秋田県鉱業会に引き継がれています。この鉱業会は、日本で唯一の“鉱業”の名称を使用する業界団体でDOWAグループと三菱マテリアルグループ21社で構成されて鉱業関係の技術力向上と資源リサイクル推進のための意見交換を行なっています。

 豊かな地下資源には鉱山の他に油田の存在があります。考古学の遺跡発掘調査によると、縄文中期~晩期の石斧、石鏃の接合部やひび割れた土器などの日常生活道具にアスファルトが付着しており、そのアスファルトの産地は秋田県であると推察されています。秋田での油田の開発は1900年代に入ってから本格化し、最盛期には当時の国産原油生産量の約7割を秋田の油田が占めていました。そして、現在も現役で原油が汲まれています。この光景は、規模は比較になりませんが、ジェームズ・ディーンの映画「Giant」のテキサスの油田を彷彿させる光景です。今も秋田中央交通㈱の路線バスには「油田(あぶらでん)」というバス停があり、油田が市民生活の身近にあることが窺えます。
 
               

 また、秋田県は再生可能エネルギー分野でも貢献しており、風力、地熱発電量は共に全国2位の実績です。特に風力発電では洋上風力発電が実用化すれば全国1位との試算もあり、将来にわたり秋田の豊かさが継続されると期待しています。

 秋田に赴任して5年になりますが、秋田の懐の深さを感じています。今は世界的にコロナ禍の影響で秋田県内と言えども遠出を控えていますが、この原稿を書いています時点での秋田県内のコロナウィルス感染者数は全国47都道府県中46番目です。今後も感染者数が増えないことを祈念しています。
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