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巻頭言
   「2021年変革の年を迎えて」 (第122号会報)
 タングステン・モリブデン工業会
理事長 後藤 信志

 2021年の新春を迎え、タングステン・モリブデン工業会会員並びに関係各位の皆様におかれましては、ご家族おそろいで健やかな新年をお迎えになられたことと謹んでお慶び申し上げます。平素より当工業会運営に関しまして、多大なるご理解、ご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

 もう改めてお話をするに及びませんが、昨年はコロナに明け暮れた一年でした。ウイルスによる感染症は有史以来人類が幾度となく乗り越えてきた災いですが、今回のCOVID - 19によるパンデミックは、致死率こそペストをはじめ過去の感染症ほど高くありませんが、現代のグローバル経済を基盤として生活している人類には致命傷になりかねないものだということを世界中の人々が知ることとなりました。

 感染症の感染拡大はその感染力もさることながら、人の移動スピード、接触頻度に大きく依存しています。100年前のスペイン風邪のパンデミックは第一次大戦による兵士の移動が引き金となり、世界中に広がって行きました。14世紀のヨーロッパのペストは中央アジアから感染が始まり、地中海沿岸ルート、内陸ルートなどいくつものルートをたどりヨーロッパ全土を侵食していきましたが、ほぼ2年の時間を要しています。今回のコロナウイルスは一昨年末に発生後わずか1カ月たらずで世界中に拡散していきました。交通手段も発達し、経済圏、生活圏がグローバルとなった現代では、今後もウイルスによる感染拡大を根本的に抑えることは容易ではありません。

 今回のパンデミックにたいして世界中がさまざまな手段を講じていますが、ネックとなっているのが経済活動との両立です。都市封鎖は基本的な感染対策ですが、経済に大きな影響を与えます。100年前と比べると比較にならないほど大きくなった経済活動はもはや停止することができません。日本でも2回目の緊急事態宣言が発出されましたが、対策の強化にともなう経済活動の停滞が大きな問題となっています。

 今後今回のようなウイルスによるパンデミックは10年に一度の頻度で発生するともいわれています。私たちは、生活、企業活動をいわゆるウィズコロナ(ウィズウイルス)に変換定着させることが急務となりました。テレワーク、WEB会議の定着はもちろんのこと、製造工場等のテレワークが困難な職場をどうするかが課題となっており、すでにドイツでは工場をテレワークに近い状態で稼働させるために、自動化、MCの遠隔操作等に真剣に取り組み始めているそうです。このような企業活動の変革は、桁違いの生産効率向上の可能性を秘めています。

 また、今回のパンデミックを境として、未来に向けてどのような世界を創り出すかが今後の重要な課題です。世界の波は脱炭素社会へ大きく舵をとり、カーボンニュートラルを合言葉として世界的な取り組みが開始されました。日本においても昨年の12月2日には菅内閣の第5回成長戦略会議において今後の成長戦略の実行計画を定めましたが、カーボンニュートラルに向けた取り組み、ウィズコロナ・ポストコロナの世界での事業の再構築、新たな日常の構築が核となっています。

 あらたな世界を切り開いていくためには革新的な考えを生み出す環境、人材の育成が重要ですが、日本はまだその土壌の整備が遅れています。1979年に世界的なベストセラーとなった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で日本の高度経済成長の要因分析を著した米社会学者のエズラ・ボーゲルさんが亡くなられたというニュースが昨年報じられました。この本でボーゲルさんは、日本の戦後の飛躍的な経済成長は、日本人の勤勉さ、組織体での業務遂行能力、それを支える年功序列の社会制度によるものだと結論付けています。ただ、のちにボーゲルさんはこの奇跡の経済復興をもたらした強みが、90年代以降の日本の衰退につながる弱みになったとも語っています。世界全体が戦後の物のない時代から、大量消費による生産を大きく後押しする時代へと流れて行った潮流では通用した日本の保守的な機能が、消費が飽和し、新たな市場開拓を迫られた時代では通用しなかったわけです。世界の変化、大きな波が来た時に必要なものは、迅速に軌道を修正して、柔軟に対応できる能力です。まさに今私たちは歴史的なターニングポイントに立っているのかもしれません。今こそ、これまでの考え方をリセットして、新たな時代へ立ち向かう決意と柔軟な対応が必要です。

 われわれタングステン、モリブデン工業会も今回のパンデミックを新たな転換期ととらえて、これまで培ってきたタングステン、モリブデンの製造技術、特性をさらに進化させ、新たな市場へと広げていけるよう会員皆様の力を結集して、今年を大きな変革の年にしていきたいと思いますので、なにとぞご支援の程よろしくお願い申し上げます。

 最後に、皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げ新年のご挨拶とさせていただきます。
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