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寄  稿
   「タングステン、モリブデンの無限の可能性を求めて」(第121号会報)
株式会社サンリック

執行役員 松本 康裕

 私は、PGM(プラチナ・グループ・メタル)の会社に30 年勤務して、4 年前にサンリックに入社致しました。
タングステン(W), モリブデン(Mo) はイリジウム(Ir),プラチナ(Pt) と融点こそ近いものの、特性や加工方法、地金単価が全く異なり、勉強する日々を過ごしております。

   
 Ir やPt は溶解でインゴットを作成し Ir は熱間、Pt は冷間で加工が施されます。溶接が可能である一方で、地金単価が高価であることから、加工ロスを抑制するため、切削加工はなるべく施さない製法が用いられております。また精製技術が確立されており、故品(使用済スクラップ)から高い収率で回収され、再利用されております。

 Ir の主な用途は、酸化物単結晶育成用ルツボ、有機ELの燐光材料などです。原産地のほとんどは南アフリカであり、Pt の副産物として約8.2 トン/ 年(2019 年)の産出となっております。直近の相場は ¥6,200/g 程度となっております。
   

 最近になってW,Mo に無限の可能性を感じ始めており、今回本会報に執筆させて頂きました。

 サンリックではW やMo を使ったヒーターおよびヒーターユニットの取り扱いが多く、入社当初はW,Mo の加工難易度の高さが印象的でした。また、ウォータージェット切断機、職人芸での板金加工、リベット止めなど、今まで見たことが無い装置・加工技術に驚愕しました。

 また、お客様に関しては、半導体、ディスプレイ、電子部品、自動車関連、各種装置部品、光学部品、医療関連と幅広く、W,Mo の弱点を克服できれば、まだまだ幅広い分野で使われる可能性が高いことを確信いたしました。

 2017 年、W,Mo はヒーター材料にもかかわらず、抵抗が高くないということで、昔からお付き合いのある、東北大学金属材料研究所の吉川研究室 鎌田准教授に相談致しました。

 同研究室では、マイクロ引き下げ(μ -PD)法にて、金属や酸化物、フッ化物などの単結晶ファイバーを育成しており、W,Mo を用いた合金についても、μ -PD 法でチャレンジすることになりました。ポイントは組成探索であり、①ルツボの使用限界温度以下の融点の組成 ②ルツボと反応しない組成 を探索致しました。何種類もの材料を試作した結果、最適な組成が見つかりW,Mo 系新合金線材が完成致しました。溶解品であり、意図的に配向組織を作りだすことで塑性変形を可能とし、常温での加工が可能となりました。高温での抵抗はW,Mo,Ta よりも高く、現在高温耐久性試験を行っております。

 新組成の探索を継続する一方、各アプリケーションでのヒーターとしての評価を開始しております。
    
 また、W,Mo が高温、大気中で使用できれば、夢が広がると考えております。耐酸化材料を傾斜的に着けるなど、様々な研究者方々に相談を始めております。

 そもそも株式会社サンリックは、加工がメインの会社ですが、素材開発も必須と考えております。

 背景には、廉価な中国材料の台頭が著しく、価格競争が激化しております。

 今後も生き残りをかけて、日本の材料技術の中核である大学・官公庁研究所の先生のお力をお借りして、W,Mo の無限の可能性を求めて参りたいと思います。

【謝辞】
 この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものです。あらためて御礼申し上げます。
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