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技  術
  「タングステン、モリブデン製炉部材の加工技術開発による製品寿命の向上」 
  (第120号会報)
    株式会社アライドマテリアル

星 聖一

1.緒言
 タングステンおよびモリブデン製の炉 部材は、サファイア単結晶の育成やセラ ミックスやネオジム磁石等の焼成の用途 に用いられる。その炉部材の具体例はヒ ーター、リフレクターや敷板・容器等である。これらの使われ 方が近年変化してきており、使用条件がより厳しくなり、また 寿命向上(耐変形、割れ対策)の顧客要求が厳しくなっている。

 厳しい使用条件と寿命向上の要求に応えるため、当社は炉部 材に好適な製品開発に取り組んできた。モリブデンにおいて製 品化した例として、TEM材、TEM-B材およびDMB材があり、 これらは、高温使用時の変形防止のために結晶制御した製品で ある。TEM材、TEM-B材は長細い結晶を維持、DMB材は大き な結晶粒にすることで、特性が向上している。特にDMB材は、 巨大結晶粒のモリブデンを量産化したもので、耐熱特性が大幅 に向上しているのが特徴であり、当社の結晶制御技術を、精密 で的確な製法コントロールによって実現している製品である。

 図1に示すように、モリブデン材(Mo)に比べて変形が抑制 される製品設計であり、その改善効果は顧客評価で確認をす すめていただい た結果、採用が 着実に増えてき た。
      

  しかし、これ らの製品にも課 題がある。炉部 材としての形状 付与を終えてか らの特性は改善 されたが、形状 付与をする段階での難易度が上がった。顧客で形状付与する場 合はもちろん、当社内で形状付与する場合も問題となる。モリ ブデン材に比べると、加工工程全般で難易度が高く、製品精度 や加工中の割れ発生が問題となった。

  本題では、当社製品のなかからモリブデン製の角型容器を対 象に、製品の寿命向上を目的に、加工技術開発による製品精度 の向上を目標に掲げ、製造条件の見直しと管理方法の明確化に 取り組んだ事例を紹介する。

2.現状把握
 本題の加工技術開発をおこなう前の現状は以下の通りであった。

[製品精度]
  ・角型容器を用いるときに、着座、段積みのガタつきが生ず ると問題となる。これは製品を製作した直後、初期の寸法精度 (加工性)と、製品を繰り返し使用したあとの寸法精度(耐変形) が要因である。まず、ガタつきそのものが使用に適さないのと、 たとえ優れた耐変形性を有する材料であっても、初期の寸法精 度が悪いがゆえに、繰り返し使用したあとの変形を招く懸念が あった。

[加工中の割れ発生]
  ・加熱温度の調整や、精度の調整は寸法を確認して組み上がり を予想して調整をしていたが、管理ポイントと範囲は明確化して おらず、カン・コツで調整をしていた。 ・少量多品種の炉部材において、特に板金成形をする角型容器 においては複数の部品を組み合わせるため、それぞれの部品を一 定の精度で加工し、また再現性を得ることには限界があった。 本題では、この2つのうち前者の課題である製品精度の向上に 取り組んだ。

3.製品精度向上における管理ポイント
  一般的な角型容器の製造工程を以下に示す。
  設計:①材料選定、②部品設計、③加工指示
  加工:④材料、⑤板取り切断、⑥穴・形状加工、⑦曲げ成形、 ⑧組立

 この製造工程において、②の加工工程で、⑤⑥⑦⑧の目標精度 を設定する。

 製品完成後の最終検査で製品精度が目標精度を外れていたた め、⑧から工程をさかのぼり、⑦の精度ばらつきの要因を探索した。

 ⑤⑥⑦⑧の各工程での精度を実測すると、目標精度に対して差 が大きいのが⑦であった。そのため⑧でゆがみをまねいたと考え られる。

 そこで、⑦の曲げ成形における精度ばらつきの要因を確認して いくと、曲げ加工時のワーク温度が主であった。さらに、ワーク 温度のばらつきを支配する因子を探索していくと、治具(金型) の温度の影響があることがわかった。そのため、治具の温度の経 時変化やばらつきが小さくなるように、治具の加熱温度や加熱時 間などの管理項目と範囲を 明確化した。

4.結果
 3.の管理により角型容器を製造した結果は以下のとおりである。
 ①改良された条件で製造した角型容器は、従来の条件に比べて、 底面ガタつき、側面ゆがみ共に減少した。顧客での繰り返し使用 において、従来条件の場合に比べて 寿命が改善した。
 ②製造条件の見直し効果として、精度確認のための予備材の使 用が削減されるなどコストも低減した。

  なお、管理範囲を明確化しても、加工寸法・条件によっては② での設計値と合致しない場合が若干残ったが、この場合は、③加 工指示へフィードバックして微調整して対応している。

5.まとめ
 モリブデン製の角型容器の製造方法の開発では、構成する部品 の精度を向上することで製品の精度が向上すると考え、部品の精 度向上の管理ポイントを明確化した。製品の精度を向上すること で、さらに寿命を向上する可能性を示した。

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