「 新型コロナウイルス感染拡大から考える工業会の役割について」

東芝マテリアル株式会社
代表取締役社長 青木 克明

    現在、新型コロナウイルスの感染が世界中で広がり、さまざまな影響が出ています。学校の休校、外出の自粛・禁止、マスク・トイレットペーパー・消毒用アルコール用品の不足、株価の歴史的急落、航空・旅行業界の需要喪失、さらには自動車メーカ等でも操業を一時停止するなど、日常生活への影響にとどまらず、世界経済への影響も大きくなってきました。感染拡大や感染の確率を抑える方策は、少しずつは見えてきたようですが、国内では感染経路がわからない患者も増加しています。欧州や米国での爆発的な広がりを見ても、本当に先行きが見通せない状況です。

 そんな中、この展開を予測していたかのような小説「首都感染」(高嶋哲夫著)が注目を集めていることを知り、私も早速読んでみました。10年前に刊行されたものですが、筋書きがかなり酷似しています。まさに「予言の書」といっても過言ではない内容でした。

 20XX年、サッカーワールドカップ開催中の中国で、致死率60%以上の強毒性新型インフルエンザが出現して世界中でパンデミックが発生。その状況下で、日本の生き残りを賭けた作戦の展開を記載したものなのです。ネットで本著に関わる記事を検索しましたが、著者の提言がいくつかあり、「大切なのは怖がるべきところで怖がること、今回の状況はすべてにおいて準備不足」とのことでした。また、ネットで作品のレビューを見ると「震災、津波、原発などをテーマにした高嶋先生の作品はまるで予言のようです。」との記載がありました。テーマは別でも、キチンとした見方ができる著者が、普通の想像力を働かせればすべて「容易に」予測できることなのだと思います。この本を読んでみて、アンテナを高くして準備を怠らないということを徹底すべきであると再認識したところです。

 翻って見ると、世の中の最近の事象として、MARS、SARS、ジカ熱、エボラ出血熱、温暖化による様々な気象変動、地震、台風、経済のグローバル化あるいはネット社会の進展による爆発的な変化や流行の発生なども、言ってみれば「容易に」起こりうる、また「容易に」想像できることとして今後も多く発生するものと感じます。これまで深く考えられることがなく「想定外」と見做されてきた事象が必ずしもそうではないと言わざるを得ない状況であり、ひとたび何か起きた場合、「想定外」では済まされないということになるかと思います。ただ、今回の状況を見ると、予測はできても、行動する意思決定を、いつだれがどのような規模で行うのかということについては、本当に難しいと感じました。

 現時点では、まずは新型コロナウイルスへの最大限の配慮をしながら、生産・営業活動を継続や一時休業なども視野に入れて様々な事項にも対応を怠らぬようにしたいと思います。

 また、昨今、お客様からBCP(事業継続計画)対応への要請が昨年の台風被害等で大きくなってきたところかと思います。今や日本各地で台風被害等の自然災害が多数発生している状況です。それに加えて今回の新型ウイルス騒動です。リスクに対しどこまでお金と労力をかけるかという計画や対応は、今までは企業ごとに考えるものであり、責任も各企業が負ってきたかと思います。しかし、最近の大きな変化においては、一企業で賄えるようなものではない要求、さらには我々独自の判断で対処が困難な事柄に直面することになると「容易に」想像できます。何か起きた時に「想定外」では済まされない世の中になってきたと感じます。

 今後は、工業会に属する企業同士が適正な競争を妨げない範囲で、お客様のため、あるいは自衛のためにも、何らかの協力体制を検討し、構築していくことも工業会としての大きな役割、存在意義となってくるのではないでしょうか?また、新型ウイルスの影響により4月の定例理事会が延期となりました。今後もこう言った状況が起こりうると考え、TV会議やネット上での会議も開催できるようにするべきと感じました。これらの案件は、今後の会合で議論していきたいところです。

 本会報は4月発行とのことですが、発行される時期でも収束という状況となっていることは未だ想像できません。新型コロナウイルスの感染が爆発的にならず、コントロールされている状態となっていることを願ってやみません。
末筆ではございますが、本会に参加されている企業の皆様および関係するお客様、取引先企業様等関係各位におかれましては、手洗い、うがい、マスク着用などを徹底され、感染防止と事業の継続が両立されますことをお祈り申し上げます。

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