「超微粒WC 粉末の開発」

日本新金属株式会社
〇林 寛之  清水 秀昭

1.はじめに
近年の切削加工や塑性加工の省力化および高速化に対する要求は厳しく、これに伴い当該用途の各種工具を構成するWC基超硬合金はより高硬度・高強度が要求されている。とくにPCB ドリル、極細径エンドミルではこの目的を達成するため素原料として超微粒WC 粉が必要である。
 
 従来、微粒WC 粉の製法としては酸化タングステンとカーボンを用いた直接炭化法が知られているが、更に高品質な超微粒WC 粉の合成プロセスの開発を目指して鋭意研究を行った。本稿では新規開発した超微粒WC 粉(以下WC-FX)の開発経過、WC粉末特性、量産化技術について報告する。

2.試験方法
 均質な超微粒WC 粉を合成するためには、出発原料の分散状態が重要であることから種々のW 源、C 源を評価した。

 出発原料としてはW 含有溶液と微粒C.B から均質な前駆体を得た後、この前駆体を炭素還元、炭化する方法を採用した。(図.1)
   

検討事項は以下の3 項目とし、試験を行った。
① 出発原料
② 前駆体合成方法
③ 合成温度

3.結果
 ① 分散性試験の結果、W 源はメタタングステン酸アンモニウム(以下AMT)水溶液、
    C 源は微粒のC.B(BET ≧ 50m2/g)が最適であった。
 ② AMT 水溶液とC.B を混合したスラリー溶液の乾燥方法は、スプレードライヤーを
    用いた噴霧乾燥法が分散性良く、異物混入防止の観点からも優れていた。
 ③ 噴霧乾燥した前駆体は空気中300℃で熱分解後(図.2)、非酸化雰囲気中にて
    1,100℃で還元炭化することで均質で超微粒なWC 粉が得られた。

    図2 熱分解試験結果
                         
4.まとめ
 AMTと微粒C.B からなる前駆体原料を調製し、これを直接炭化することにより不純物レベルの極めて低い、均質で比表面積3m2/ g以上(BET 換算粒径0.12μ m 以下)の超微粒WC粉(WC-FX)の開発・量産化に成功した。(表.1、図.3) 
   表1 WC-FX分析結果

   図3WC-FX SEM観察結果

 尚、本製品は凝集した造粒形骸を有しており、経時的な粉末の表面酸化が抑制され、安定した品質の維持が可能である。

 本WC-FX 粉を使用した超硬合金は従来材種に比べ更に高性能化が可能であり、現在ミニチュアドリル、エンドミルに採用されており、さらにロータリーダイ、スロットダイ等の耐摩耗工具材への応用が進められている。