「空撮への挑戦」

日本新金属株式会社
常務取締役 森田 進

 巷では“S NS映え” のフォトジェニック画像があふれ、これまでの人生2/3以上を銀塩写真で育った自称写真マニアも大いに刺激されている。小学生の頃、雑誌付録のピンホールカメラ撮影と押入れ現像で開眼。印画紙にぼんやり浮かんだ景色に驚愕した。学生時代は父から譲り受けたハーフサイズの名機オリンパスペンをいつもポケットに、友達との楽しい想い出を切り取りながらフィルム感度(当時はASA)、絞り、シャッタースピード等露出の基礎を学んだ。ハーフサイズはフィルムや現像代を節約できたが当時は手振れ防止と格闘した記憶がある。そして社会人となり強烈な試練と巡りあう。

 入社間もなくタングステンカーバイドの品質管理を担当。超硬テストピースを焼結、合金特性、組織調査に明け暮れた。当時の顕微鏡写真はポラロイドカメラが一般だったが、弊社技術諸先輩は写真へのこだわりが非常に強く、フィルム撮影自社現像が鉄則。真っ暗な暗室で缶入りのミニコピーフィルムを取り出し必要枚数の長さを切取り、空パトローネへ巻取りからスタート。健全組織は自動露出でほぼOKなのだがη相や遊離炭素の異常組織は同一視野を多段露出撮影、コントラストの調整には非常に苦労した。撮影後はまた暗室にこもり、ミクロファインでタンク現像、停止、定着、乾燥でやっと印画紙プリントへ。ユーザーからの至急調査依頼ともなれば停止薬の酢酸にむせながら丸一日暗室にこもった。やっと一連の技をマスターし、数10ページの組織写真レポートを上司に提出すると顕微鏡光源ムラNGとのダメだし。手札サイズでは気づかなかったが4つ切りに引き伸ばすとゼブラ状の縞模様がくっきり。光源フィラメント劣化が原因で、タングステン線のサグ(垂下)特性について身をもって体験した。

 私的には念願の一眼レフを購入、マクロ、広角、望遠とレンズ交換の醍醐味を満喫。然しながら家族が増えるともっぱら専属カメラマンとなり、子供の成長記録、アルバム作成に専念してきた。家族旅行ともなれば三脚、ストロボ、3本/日のフィルムをISO感度100&400で準備。航空機利用にはセキュリティーゲートでの感光防止に鉛シートの保護袋が必需品であった。

 そして21世紀と共に銀塩からデジカメへの転換。DPE待ちのドキドキ感は懐かしいが、シャッターを押したその場で画像確認、フィルムを気にせずいくらでも取り直せる利便性に脱帽し、古いカメラはPENを残しすべて不燃ごみ処分となった。デジカメはキャノン、ニコン等色々試したがやはり若き日のPENの思い出が強く、オリンパスのフォーサーズ一眼が愛器となった。気に入った画像はとりあえず撮影日のホルーダーごとにPCとクラウドにバックアップ、その数1万枚を超えた。RAW現像も試したが、ストレージ容量と時間が足りず、老後の楽しみにおいてある。

 子育ても一段落、家人と二人でドライブがてら満開のさくら、ひまわり、曼殊沙華等々、撮影を楽しんできた。ところが家人はいつの間にかパワーアップ。複数の写真教室で学び、写真検定合格にコンテスト入賞。最近ではサークルの写真展開催、写真女子会(婦人会?)の海外撮影ツアーへとエスカレート。当初はカメラのいろはをレクチャーした立場が完全にお株を奪われてしまった。

 還暦を迎え令和節目の年、写真での名誉挽回を思案した結果、ひらめいたのが絶景を特集したホームページ画像。中でもドローンを使った空撮写真・動画。これだと思い、溜まった家電ポイントを使って入門用トイドローンをネット購入、室内で飛行練習開始。しかしこれがかなりのじゃじゃ馬。ホバリングは全く安定せず、勝手に回転、移動、ふすまや壁紙は傷だらけ、部屋干しの衣類に絡まりプロペラ破損の連続。家族の冷たい視線を浴びつつ、やはりトイ仕様では無理と言い訳し、基礎から学ぶためにドローンスクール講習を受講。免許制度はないが、ドローンの飛行エリアは航空法で厳しく規制されており、200gを超える機体の市街地飛行には国交省の許認可が必要。トイドローンからプロ用機種までのデモフライト体験ではその差歴然。GPS付上級機は高度50m超でも風の影響をほとんど受けず、ノイズのない鮮明な4K 画像を送信してくる。またこの市場は設備点検、農薬散布、物資輸送などのビジネスチャンスで急成長の模様。プロ機材はタングステン資源と同様、世界の70%以上を中国メーカーが独占状態と知り驚いた。
 
 ハッセルブラッド搭載プロ機種の衝動買いを何とか制し、ベストセラーの高機能トイドローンを購入しフライト練習を再開。GPS無しでもインテルチップが見事に働き安定性抜群。無風の週末は近所の山にこもり、ひたすら操縦練習の日々。ようやく課題の定点ホバリング、8の字フライトも可能となり、いよいよプロ機種へのグレードアップを検討中。この秋には、海岸線、棚田、瀑布など本格空撮へチャレンジ。
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  空撮練習の友、 80 gの“Tello 1号”          山手の墓苑上方10m から淡路島方向撮影。
                                  直後突風で機影は山中に消えた。
 

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