「 ひばりのように」

株式会社アライドマテリアル
代表取締役社長 北川信行

  今年も新年度が始まりました。皆 さまが本稿を読まれる頃は、新元号 も発表になっており、例年にも増し て、新たな気持ちで新年度を迎えて おられることでしょう。

 日本独特の 元号制もそうですが、新年度が4月から始まることも、賛 否両論ありますが、私は四季のある日本にとっては、全て が活気づくこの時期に新年度を迎えるのはふさわしいと思 っています。3月後半から5月にかけての春が私の一番好 きな季節です。寒さが緩み、さくら前線の話題が出はじめ るころ一気に春のムードが高まり、甲子園の選抜大会が始 まり、プロ野球が開幕し、草木のみずみずしい活力の中で 新年度を迎える高揚感はとてもいいものです。

  春になると思い出すことがあります。20年程前の話で すが、兵庫県のある小さな町の二方を森に囲まれた工業団 地の片隅で、新しい工場を立ち上げ、4月の初出荷に向け 準備を進めていた頃の事です。毎朝、工場敷地の一面の草 地のなかで、社員10数人とラジオ体操をしていると、す ぐ近くでひばりの鳴き声が聞こえてきます。最初の頃は、 うまく泣けず低いところを不安定に上下しながらリズム感 悪くとぎれとぎれの鳴き声だったのが、一日毎にうまくな るのがわかり、それが楽しみに思えるようになりました。 1か月もすると高い位置で上手にホバリングしながら、青 い空を支配するかの如く気持ちよそうにリズミカルにさえ ずる鳴き声に思わず「うまくなったな」と我が子の成長を 見るように微笑んだものでした。

 新入社員も地元の高校か ら数名を採用して、実習をさせていました。ある日、仕事 の合間に敷地内の草刈りをさせていたところ、突然1メー トを上わまろうかという蛇、青大将が姿を現し、引率をし ていた主任が驚いて「皆逃げろ!」と言って真っ先に駆け 出し、振り向いてみると、女性新入社員が蛇を追いかけて、 あろうことか、しっぽを捕まえて嬉しそうに振り回しなが ら戻ってきたとか、なんとものどかな出来事がありました。

 そんな新人たちも今では立派な中堅社員で大活躍をしてく れています。また、10年ほど前に北海道の会社に勤める 機会がありました、雪深く2mを超える雪に閉ざされた長 い冬を過ぎ、5月の連休ごろから一気に春めきます。冬が 長い分、それを一気に取り戻すがごとく、雪解け、桜、新 緑、花、が一気にやってきます。歩いての通勤の途上、道 沿いの裸の雑木林の向こうに工場が見えてきます、それが 連休明け、若葉が出始めると一日一日新緑が目に見えて成 長し、一週間もすると工場が全く見えなくなってしまいま す。全く自然の営みとはすごいものだと感心するばかりで した。特に最初の成長が著しく、日々成長してゆくのを目に見えて実感できるのは楽しいものです。

 人も同じこと、今年も新入社員が入って来ました。毎年 新入社員を受け入れるたびに、この会社に人生を託してく れた事の感謝とともに、責任を感じます。彼(彼女)らが 退職するまで会社を存続させなければならないという思い もありますが、そんな大げさな話ではなくても、彼らの成 長しようとする自然な力を最大限発揮できるように、社会 人としての自覚と夢を与え、目標を与え、仕事を通じて成 長して豊かな人生設計を描けるように、そんな意識を持っ てもらえるようにしなければならないと思っています。 い つも言う言葉は、会社を利用して自分を成長させ、豊かな 人生を送ってくださいという事です。残念ながら才能も素 質もあるのに早期にやめる社員に対しては、夢を与えられ なかったと反省しつらいものです、会社の責任は重い。

 私の新入社員時代は就職難で、やっともぐりこんだ会社 で毎日仕事を覚えるのが精一杯の状況で、上司や現場の班 長に叱られ毎日遅くまで残業していましたが、不思議と充 実感がありました。「超硬合金が世の中を支えてるんや」「タ ングステンの一粒は砂金と思え」などの言葉は今でも自分 の会社生活における大きな拠りどころになっていると思っ ています。

 昨今の就職事情は大きく様変わりして超売り手市場、面 接をしていてもこちらが面接をされているような気持にな ります。働き方改革もしかり、もう昔のような休みも取れ ないような状況は許されません、これは是非とも推進して いかなければと思います。でも時代は変わっても人は変わ りません、一番重要なのは、仕事に楽しさや、やりがいを 感じてもらう事、家族や子供に誇れる仕事である事だと思 います。それが仕事に感謝する心、周りの人に感謝する心 に広がってゆき、豊かな人生へとつながっていくのだと思 います。

  新入社員に対し、いまどきの若い者はといわれるが、私 も若い頃はそのように思ったものでした、しかし子供と同 じ年代の社員が入社したとき、言うこと聞かないのは当た りまえ、よくぞ毎日会社に来てくれるなと感謝の気持ちに 変わりました。もしこれが孫の年代になったら、おそらく 仕事の期待よりも、かわいくて仕方がない、何とか頑張っ てやってくれと応援する気持ちになるのだろうと思ってい ます。

  こような思いの中、今年もまた、入社式を迎えました、 どのように成長していってくれるのか、これもまた大きな 楽しみです。究極の働き方改革は「楽しくなければ会社じ ゃない」といえることでしょうか?難しいけど。


会報目次へ戻る