「分光測定によるタングステンワイヤの色評価」

東芝マテリアル株式会社
〇福士 大輔、藤澤 幸子、馬場 英昭、 山口 悟、末永 誠一、斎藤 秀一

1. 緒言
 タングステンレニウム合金(レニタ ン®)は、高融点のみならず、高い靭 性と強度を有している。これをワイヤに加工したレニタンワ イヤは、その特徴を活かし、半導体検査用のプローブピンや ヒーター用フィラメントとして利用されている。 また、組成の異なるレニタン合金を用いる熱電対は、 1200℃以上の温度測定には欠かせない製品となっている。 このレニタンは酸化による経時変化で試料表面の色が黄色や 青色に色が変化する現象が起こることが知られているが、そ の原因が酸化物の構造色か酸化膜による干渉色によるものか は明らかになっていなかった。 近年、表面酸化の現象解明には、分光測定を用いる手法が 試みられており、Si基板などの表面の酸化膜の厚みの測定な どで成果が挙げられている。また、この手法は、非破壊、短 時間で測定できるため、多くの材料へ応用されている。 しかし、これまでワイヤのような細い材料には測定スポッ トを絞ることができなかったため分光測定を適用することは 困難であった。 本報では、測定スポットを10µmまで絞ることができる 顕微分光システムを用いることで、φ0.2㎜のレニタンワイ ヤの反射率を色ごとに直接測定し、膜厚との関係を考察した 結果を報告する。

2..実験方法
 測定には顕微分光システムDF-1037((有)テクノ・シ ナジー)を用いた。サンプルには、ワイヤ径150µm~ 200µmのレニタンワイヤのメタル色の物と着色した物を用 いた。図1に測定したワイヤの顕微鏡写真と測定スポットの 模式図を示す。
        図1青色ワイヤの顕微鏡写真

3..結果と考察
 図2に各色部分の反射率を示す。メタル色のレニタンワイ ヤは可視光域(400nm~700nm)でほぼ一定の反射率であ った。しかし、着色したワイヤでは、黄色部は430nm、紫 色部では550nm、青色部は650nmに反射率の谷が観察さ れた。
     図2.レニタンワイヤの色部分ごとの反射率

 測定した反射率スペクトルから酸化膜の膜厚を計算に より求めた場合数10nm程度で、黄色から青色になるにつ れて厚くなることが分かった。 図3にレニタンワイヤの表面から深さ方向の酸素強度の変 化を示す。スパッタにより表面を削りながらオージェ分光法 により、酸素の強度変化を測定した。
    図3. メタル色ワイヤと青色ワイヤの酸素強度変化

 この結果から、青色の レニタンワイヤはメタル色より厚い酸化膜が形成しているこ とが分かった。また、酸化膜の厚みは反射率から求めた膜厚 とオーダーで一致した。 以上の結果から、レニタンワイヤの色の変化は酸化膜によ る干渉色であると考えられる。今後の検討により、本分光測 定法がレニタンワイヤの膜厚や性能の評価に利用できる可能 性がある。

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