「 福岡の空と飛行機と」

日本タングステン株式会社
  執行役員 電気部品事業本部部長
三島 彰

  年末、年始にテレビで何度も、「平成最後の〜」を聞いた。この寄稿も私にとっては平成最後のもので、より正確には「平成最初で最後の寄稿」だろう。私は生来意思が弱くてタバコがやめられない。昭和、平成と続けていて、新元号でも間違いなく続くだろう。我が家では嫌煙派が圧倒的な勢力を有しているので戸外で吸うしかないのだが、そうしていると、飛行機がしばしば目に入る。

 我が家は福岡空港の滑走路に沿って山側に20kmほど下ったところにある。下ったというのは地図上の話で20kmほど南側に、が正しい。最近、我が家のほぼ真上を飛ぶ飛行機が増えたように感じる。なんでも、悪天候の際には電波で誘導する計器着陸を使っているそうで、山側から海側に向かって着陸するときはほぼ、我が家の直上を通過する。

 計器着陸のご利益だろうが、最近では少々の風雨では欠航しない。それどころか機体が左右に振れながらも、飛んでいる。こちらが台風で臨時休業の日でも飛んでいるのを見ると航空関係者の努力に頭が下がるとともに、乗客、乗員の無事を祈ることもある。

 不思議なことに、悪天候の中を飛ぶ飛行機に自分が乗っている時は、機体が左右に振れていることはさほど感じない。むしろ、上下にガタガタ揺れることの方気になる。空中を飛んでいるので、上下の動きの方が気になるのは、当然かもしれない。

 YS-11 が現役だった大昔、強風の中でその翼が上下に、まるで羽ばたくように動くさまを見て、機体のしなやかさに驚いた。この頃、翼の両端を下から支えて胴体を上から押すという動画を見た。B787という機体の試験風景だった気がする。翼が「道頓堀のゴールインマーク」ほどに、大きくしなっても折れず、押すのをやめると元に戻る。本当に、見事なしなり具合であった。

 近年、機体の軽量化のために炭素繊維やCFRPの複合材が多用されているそうだ。複合材は強いが脆いというイメージがあり、翼や機体の骨格部分に用いるのは理解できる。しかし、あれだけ大きくしなる翼の表面(外板)もやはり、そうなのだろうか。翼の表面にはリベットのようなものが見えるので、表面の複合材に穴をあけてリベットでとめているのだろうが、応力集中とかの心配はないのだろうか。
 
 平時の福岡空港では、朝夕は南の山に向かって、昼間は北の海に向かって離発着しているようだ。離発着のどちらも、揚力が得やすい風上を意識してのことだろう。計器着陸とは違って、我が家の上を通過する時もあれば、手前で東に曲がったり西に曲がったりで、気ままだ。多分、行先によるのだろう。

 夜の離陸はたいてい我が家の方に向かって来て、夜の10時頃まで続くこともある。晴れた日の夜だと、離陸する機体に、車のヘッドライトのような明かりが見える。明かりは操縦室の下とか両翼の付け根付近とかにあり、機種によって異なるようだ。車のヘッドライトよりは各段に明るく、HIDのような白っぽい光がまるで劇場のスポットライトのように輝いている。これも将来LEDに変わってしまうかもと思うと、さみしい限りだ。

 翼の両端には赤や緑の光が見える。向かって右が赤、左が緑で、機種には関係ない。他の飛行機のパイロットから見て、相手の飛行機がどちらに向かって飛行しているかが一目でわかるよう、色と配置が定められていると聞いた。機体が通過すると明るい光はもちろん、赤や緑
も見えなくなり、機体下の赤の点滅と尾翼付近の白い点滅に変わる。上からは一体、どう見えるのだろうか、大いに興味があるのだが、なかなか機会に恵まれない。今度、飛行場の展望デッキから観察してみよう。

 夜間、はるか遠くの南北の空に、小さな光が点滅しながら、ずいぶんとゆっくり動く。東西方向にほぼ直線の軌跡を描き、軌跡は地上から見上げるとおおよそ15度あるいは30度に集中している。きっと、本州とアジアとを結ぶ国際線の航路なのだろう。

 晴れた日の昼間だと、少し後ろに飛行機雲を作りながら進む機体が見える。機体とはっきりわからないくらいの小さな点の時もあるが、不思議なことに機体と飛行機雲との間には必ず少しの空間がある。たいていの飛行機雲は一本の直線なのだが、たまに、破線の場合がある。飛行機雲は、上空の温度、湿度、気流などの気象条件がそろわないと見えないそうだ。破線となるのは、その条件が狭い範囲で変化しているのだろう。スムーズに飛行しているときに突然揺れたりすることと、関係があるのかもしれない。

 福岡では快晴と呼べる日は少ないのだが、特に、秋の澄み渡った空に飛行機雲を見かけると、青と白とのコントラストがとても心地よく、ずいぶん得をした気分だ。ここまで書いたとき「羽田へ向けて飛行中だが、気流が悪いため機長から着席の指示を受けた。これ以後の機内サービスを中止する」というCA のアナウンスが流れた。たしかにユサユサと揺れはじめ、右上の荷物棚からゴトゴト、左の壁からミシミシという伴奏までついている。PC の画面を閉じ、無事を祈ろう。ご安全に!


会報目次へ戻る