「タングステン精錬における排水処理技術の確立」

日本新金属株式会社
林 寛之

【はじめに】
 タングステンの原料鉱石は偏在性が極めて高く、その生産量の81.3%を中国が占めている(2016 年度)。 中国からの原料輸入(鉱石以外)は、2010 年の尖閣諸島問題時にレアアースの輸入が停止した際、タングステンの供給も滞った経緯が有り、供給リスクが高い状態が続いている。当社では、超硬工具スクラップからのタングステンリサイクルとともに、投入できる原料を多様化する事で調達リスクを低減する取り組みを進めている。

【課題と解決策
 原料として重要なタングステン鉱石の精錬に於いては、鉱石中のタングステン品位が年々低下している(図.1)。 特にタングステンの鉱石は、ヒ素(以下As)及びフッ素(以下F)の鉱石と同様に高温熱水鉱床のためそれら不純物を随伴しやすい(表.1)。今後の精錬では不純物の更なる低減や、系外に排出される不純物を処理する技術の向上が求められる。
 当社タングステンの精錬工程は、鉱石又はスクラップの酸化物をアルカリ溶液で抽出し、湿式精製処理を経て中間体(パラタングステン酸アンモニウム:APT)とした後、か焼、還元を行いタングステンとする。鉱石中の不純物は湿式工程で残渣として系外に除去される。不純物が多い場合は使用する薬剤量が多く、又生産性が損なわれるため改善を検討した。

 改善した工程では不純物は精錬排水側へ排出できたが、それらのうちAs 及びF は有毒性であり排水基準を満たさないため、排水処理技術の確立に取り組んだ。処理方法は吸着法、膜ろ過法、イオン交換法など様々だが、運用が容易でコスト面に優れる共沈法の採用を検討した。

【試験方法
 タングステンを湿式製錬した際に発生するAs が高濃度に含まれる排水(As ≧ 10mg/L)の共沈処理を行った。排水はアルカリ性であるが共沈反応を効率良く進めるため、p H を展開した試験を実施した。薬剤はpH 調整に硫酸、共沈反応に鉄系薬剤、凝集に高分子凝集剤を用いた。

【結果
 最適条件で共沈処理した排水のAs 濃度を分析した結果、鉄系薬剤の添加量を増やすほど排水中のAs 濃度は低減、所定量の添加により水質汚濁防止法の排水基準As ≦ 0.1mg/L を達成できた(図.2)。



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