「サッカーワールドカップに思うこと
(日本は一次予選を通過したでしょうか?)」

日本タングステン株式会社
取締役社長 後藤 信志

  この度の大阪北部地震で被災された関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興をお祈りいたします。この数年世界的に火山活動、地震の発生等地殻活動が活発化してきているような気がします。地震の予知は現在の科学技術では限界がありますので、今後、職場でも家庭でもいざという時の行動を明確にしておくことが重要だと思います。

 さて今回本寄稿を執筆中の昨夜(6月19日)、サッカーワールドカップで日本の一次予選初戦対コロンビア戦が行われ、見事2−1で勝利しました。日本が勝ったからというわけではありませんが、急遽本稿の内容を今回のワールドカップに変更することにしました。
  
 皆さんご存知のようにワールドカップ出場を決定した後の日本代表チームは得点力も不足しており、これといった手ごたえも感じることなくワールドカップに突入という状態でしたが、4月に突然の監督解任劇があり、新監督でテストマッチ3試合をこなしただけで本戦を迎えることになりました。その間、マスコミ等の批評は非常に厳しいものがあり、協会の監督の交代、新監督の選手選抜等すべてに疑問を投げかけ、戦力は過去のワールドカップ出場チームの中で最低とまで言われていました(もちろん少数ですが評価している人もいました。)。ところが昨夜の勝利から一転、今朝の新聞、TV等メディアが勝利一色に染まるのは当然ですが、監督、戦術、選手の能力等すべてが称賛の嵐でした。勿論、選手は素晴らしい試合を行い、南米チームから史上初の勝利を奪取したのですから称賛されるのは当然です。ただ、あまりにも戦前の評価との違いを臆することなく、褒めたたえるメディアにはあきれるとともに、スポーツの厳しさをあらためて痛感しました。

 今年はアメフトのアンフェアなプレイにより一躍スポーツの在り方がクローズアップされましたが、プロスポーツ及び国の威信をかけたワールドカップのような世界的な大会では勝利がすべての感があります。負ければそれまで積み上げたものすべてが否定され、勝てば何もかも消し飛んだように一夜にして評価が逆転してしまう。監督、スタッフ、選手はもう当然のことと認識しているのでしょうが、同情せざるをえません。選手には好不調の波があり、いつでもベストのプレイができるわけではありませんが、監督、スタッフはその選手をどのような戦略で、どう使いこなすかで評価が決められます。ここで大事なことは過去の経験、現在のデータから考えても誰もベストな条件を出すことができないということです。

 試行錯誤の中から監督、スタッフが絞り出した戦略、選手起用もすべて実行しなければ誰にもわからないということ、さらにいろいろなアクシデント、予期せぬ事態によりその条件も大きく変わるということがあります。今回の開始3分でのコロンビアの反則により一人が退場になったことは典型的な例です。ちなみにAIを駆使した各対戦の勝利予想が出ていましたが、日本が勝つ確率は40%でした。今回の大会の各試合の予想では40%という数字はかなり有意差のある数字だということです。この予想を裏切ることがスポーツの醍醐味でもありますが、個人種目の競技よりも、団体種目の競技のほうが、大きな大会での番狂わせが多いのは、たくさんの要素がからみあっているからでしょう。

 今回のワールドカップ出場メンバー選抜にも注目が集まりました。若手を思い切って起用するのか、少々故障などを抱えていても経験ある古参選手を選ぶべきか、監督は悩み悩んで結論を出したことと思います。私はサッカーのことはそれほど詳しくありませんので何とも言えませんが、メディアでは否定的な意見が多数聞かれました。どの世界でも同じだと思いますが、若手の起用、世代交代はとても難しい問題です。安全策での経験者か、イノベーションの可能性を秘めた若手か、一発勝負のスポーツの世界では特に頭を抱える選択だと思います。私たち企業の世界は一発勝負のスポーツではありませんので、いかにタイミングよく未来につないでいくか、将来を見据えて若手をどう起用していくかは経営者の最も大事な仕事の一つだと思います。

 いずれにしてもそのような厳しい環境の中を切磋琢磨してきた各国チームの戦いを観戦できることはうれしいことです。50年前には世界中の人がリアルタイムで試合を見れる日が来るとは誰も想像できなかったと思います。ワールドカップのようにみんなで熱くなれる機会は身近では少なくなってきましたが、私たちも学生時代のクラスマッチで熱くなったころを思いだして、従業員全員が仕事に熱くなれるような新しい市場、新しい製品などを弛まなく創り出していきたいと思います。この原稿は6月20日に書きましたが、この会報が皆様のお手元に届くころには、ワールドカップの決勝も終わっています。果たして日本は一次リーグを突破したのでしょうか?


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