「ステンレス鋼の摩擦攪拌接合が可能なW基合金ツール材料の開発」

株式会社アライドマテリアル
辻 あゆ里

  1. はじめに
 摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)とは、回転する凸 状ツールを被加工材に挿入・走行させることによって 摩擦熱を発生させ、被加工材を軟化させるとともに塑 性流動させて接合する固相接合法である。溶融・凝固 を伴わないため、溶接ひずみも小さく接合時の変形が 小さい、接合部は微細均一組織で機械的特性が良好と いう特長をもち、溶融溶接が困難なアルミニウム合金 へ適用され、航空宇宙、自動車等に実用化されている。

  一方、鉄鋼のFSWでは、難溶接材や異鋼種材の接 合が容易で、熱影響が少ないメリットはあるが、接合 時の荷重と温度に耐えられ、かつ安価な接合ツールが ほとんどないため、実用化はあまり進んでいない。当 社では、種々の研究開発を進め、ツールの長寿命化に 必要な特性(高温での強度、延性、熱伝導)を明らか にし、接合時の荷重と温度に耐えられる硬質粒子を添 加したW基合金を開発したので、その特長について 紹介する。

2.W基合金の特長
 開発W基合金は、硬質粒子の種類やサイズ、添加 量の調整と焼結条件の最適化によって必要特性を満足 させた。代表的なW基合金の特性を表1に示す。比 較として、耐摩耗性に優れたツールと知られているセ ラミックスとWの複合材料の特性も示す。開発W基 合金は、熱伝導率を維持したまま、ツール先端温度領 域(900〜1200℃)で高強度、高延性(高靱性)で ある。

3.FSWツールとしての性能
 この開発合金を所定のツール形状に加工後(図1)、 表面にセラミックス皮膜し、SUS304ステンレス鋼 のFSW(ツール回転速度100〜200rpm、接合速度 60mm/min)を実施した。ツール回転軸を含む縦断面 での断面積の減少量を定量化し、減少量が2mm2を 超えた接合距離、もしくは、ツール表面に割れ・欠け が発生した接合距離をツール寿命と定義した。プロー ブ長1.7mmのツールでは接合長20m以上を、実用 に近いプローブ長3.8mmでも接合長12mを走行し てもツール欠損はなく、ツール形状変化もほとんど生じなかった。FSW後のビード様相(図2)も非常にき れいで、接合部は微細組織を呈し良好であった。
  
4.まとめ
 ステンレス鋼用のFSWツールへの適用を目的に、粉 末調整技術、焼結技術およびコーティング技術を展開し、 高温での強度、延性および熱伝導性が良好で、耐摩耗性 に優れたW基合金ツール材料を開発した。実用ツール として使用可能と思われる走行距離も得られ、現在、サ ンプル供試を行いながら性能評価を進めている。実際の 走行では、さまざまな形状や場所で、走行条件も制限さ れた環境での性能評価であるが、繰り返し評価を進め、 今後のステンレス鋼のFSWの汎用化への貢献に期待す る。


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