「2018年の新年を迎えて」

タングステン・モリブデン工業会 理事長
    北川 信行

 新年あけましておめでとうございます。2018年の年頭にあたり、会員並びに関係各位の皆様に謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 さて今年はどんな年になるのか、年末年始の報道では様々に伝えられていましたが、政治においては依然予想がつかない混沌とした状態が続きますが、経済については概ね堅調に推移するといった予測が大勢を占めていた様に思います。

 国際政治は米国大統領に振り回される中、近隣諸国との関係も複雑なものとなってきました。中でも北朝鮮による弾道ミサイルの発射の脅威、これを取り巻く米中の動きなど目を離せない状況にあります。一方、経済は米国をはじめ、国内においても堅調に推移しており、日経平均株価は26年ぶりの高値で始まりました。なかなか実感は出来ませんが、戦後最長の好景気の中、10 月の衆議院選挙では自民党が圧勝し安部安定政権を望む国民の声となって表れました。このように経済全体としては右肩上がりが継続とすると見られますが、その中身を市場や企業単位で見てみると、主役の交代が鮮明であり、かつての優良企業が衰退し、新しい市場を創出しけん引する企業が台頭してきています。急速な自動運転やEV化、深刻な人手不足や働き方改革によるロボットニーズの急浮上、IoT やAI による物づくりそのものの変化等、ものすごいスピードで技術のみならず価値観や嗜好が変化しており、これに追随できるかどうかが、まさに企業の存亡を決する事態になっていると言っても過言ではないと思います。情報に振り回されることなく、実際どこへ向かうのか、何が真実で、何が誇張なのか、どこにチャンスがあるかを、を冷静に見つめることが肝要であると思います。

 また、見過ごすことが出来ないのが、企業における品質偽装の問題です。コンプライアンスの強化が叫ばれる中、自動車メーカーによる無資格検査員による検査や大手素材製造メーカーによる品質特性の改ざんなどが明らかになり、これらは世界に誇る日本企業の信頼を大きく失墜させるものであり、あってはならないことであります。特にタングステンやモリブデン等の素晴らしい材料の特性を元に事業を営んでいる当業界に取って、その特性を貶める様な行為は決して許されません、改めて胆に銘じた次第であります。しかしながら、見方を変えてみると、これら品質偽装の根底には実態として不具合はないとの認識があり、それには日本独特の過剰品質や過剰規制などが背景としてあるのではないかと思います、今後、海外、特に中国等と競争をしてゆく中でこれらがハンデとならないか気になるところです。

 さて、当工業会に関しましては、ここ数年は照明のLED化に代表されるタングステン細線需要の減少やモリブデンの液晶関連部材の低迷という厳しい状況が続いておりましたが、当工業会の統計資料によりますと、一昨年はようやく下げ止まりの様子がはっきりとなったことに加え、2017年度上期では前年同期比、粉末を除く金属加工品でタングステンは113%、モリブデンは107%の出荷量となり、さらに直近の10-12 月実績では、それぞれ117%、126% と顕著に回復を表すものとなっており、当業界にも漸く好景気の波が来たと言えます。

 このような状況の中で昨年11月に大阪で第29回のタンモリセミナーを開催致しました。参加者は会員企業とお客様を合わせて148名と多数の参加を頂きました。3Dプリント技術の応用例や放射線遮蔽用途開発事例、品質改良や販売促進策、資源情報など様々な報告があり、タングステン、モリブデンという材料の可能性を強く感じさせる機会となりました。先ほど申し上げましたように、世の中の技術革新のスピードは激しく、今まで産業の主役であった物の幾つかの交代期を迎えております、今までに思ってもいなかったところに新しい用途が生まれる可能性を秘めており、これは大きなチャンスであります。タングステン、モリブデンという素晴らしい素材には他に代わるもののない優れた特性があります。私共のやるべきことは、その優れた特性を最大限発揮させ、新しい機能を引出し、加工方法等の他の技術と組み合わせることにより、新しい製品を生み出し新市場を切り開いてゆく事であると思います、これが、この変化の激しい時代を乗り越えていく最良のそして唯一の方法であると思う次第であります。

 さて、今年は戊戌年です。(つちのえいぬ)60年前はどのような年であったのかというと1958年は、今上天皇のご成婚や第二次岸内閣発足(安部首相の祖父)、東京タワー完成そしていわゆる岩戸景気が始まった年でもありました。

 この戊戌の戊は「変わり目」を表すと言われ、これまでのルールや慣習にこだわらず、新しい動きが生まれる年とのことであります。古いものを一度捨ててみると、新しいものが見えてくる。本年は勇気をもって前進し未来に向かって進む年にしようではありませんか。

 本年が皆様にとりまして素晴らしい年となりますことを心からお祈り申し上げて新年のご挨拶と致します。