「私が興味を持ち、実践したいと思った本」

日本タングステン株式会社
取締役 執行役員 機械部品事業本部長
毛利 茂樹

  タンモリ工業会の皆様に、初めてお目に掛かりますので、少し自己紹介をさせて戴きます。私は昭和57年入社以来、21 年間セラミック製品の技術、製造に携わり、HDD 用セラミック磁気ヘッド基板を世界シェアー70%にしたことが誇りです。その後は、マネージメント業務となり、開発技術センター、セラミック部、超硬部品部、電材部品部、1 年間中国合弁会社出向、帰国後は超硬部品部とセラミック部を統括する機械事業本部の本部長に就任し、平成29 年6 月の株主総会後、取締役執行役員の任に就いております。

 さて、本題に入りますが、中国からの帰任後、時間の余裕もあり、ビジネス書を探し求め、この本に出合いました。目次を眺めると、「破壊的イノベーションの理論の探求」の章に、HDD(記録装置:ハードディスクドライブ)が研究対象になっていることもあり、興味を持ちました。その本は「イノベーションのジレンマ」入門であり、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授の研究を、グローバルタスクフォースが山中英嗣氏監修のもと著作したものです。

 この本の中で、私の心に響いたフレーズが2 つ有りました。一つ目は「用事を片付ける」と言うフレーズです。これは何を意味するのか、私の解釈は以下の通りです。
 通常、「顧客のニーズに答える」すなわち、QCDS 品質・価格・納期・サービスの改善、ある時はスペックを向上させることで、そのニーズに対応しています。しかし、「用事を片付ける」は、目の前の顧客ニーズ対応に留まらず、将来発生するニーズを念頭に置いています。例えば、HDD では、14 インチ(メインフレーム市場)のガリバー的企業は、利益率が高いハイエンドの顧客のニーズへの対応(記録密度の向上)は十分に尽くしていましたが、8 インチのような利益率が低いローエンドを気にしていませんでした。すなわち、小型化という「用事」を見逃した訳です。ガリバー企業が小型化を意識した時は、8 インチHDD も普及が進み、そのうち記録密度が上がり、ついには8 インチHDD 企業に取って代わられる事態となりました。私は今、「用事」は何か、すなわち将来は何が、どのような事が必要とされるかを、意識して活動しています。

 二つ目は「破壊的イノベーション」と言うフレーズです。「破棄的イノベーション」とは、評価基準が違う変化を伴います。タンモリ工業会の照明分野は、まさにLED の「破壊的イノベーション」に曝されています。
 CD の信号ピックアップ用光源やイルミネーション用光源と見ていたLED が高輝度技術進化させ、コストダウンに成功した結果、照明用光源を始め、車載用表示板光源、ヘッドライト光源、方向指示光源に使用され、タンモリの生産量が現在のように落ち込むまで、普及しています。

 当社では、数年前からLED 市場向けに無機膜、無機膜を利用した基板の研究を実施していますが、まだ売上貢献するには、時間が掛かる見込みです。前述しましたHDD もコンピュータがメインフレームからミニコン化、デスクトップPC 化、ポータブルPC 化、モバイルPC 化と変化する中、小型化、省エネ化、高密度化等の評価基準が変化する「破壊的イノベーション」に曝され、14 インチHDD から、8 インチ、5 インチ、3.5インチ、2.5 インチ、1.8 インチと変化して、それを担う企業も変化しています。生き残りと更なる発展を図るには、この「破壊的イノベーション」を早期に察知して対応するか、「用事を片付ける」為に、「破壊的イノベーション」を自ら起こすことが必要に成ってきます。
 
 当社が、起こしている「破壊的イノベーション」の一つをご紹介致します。それは、平成29 年9 月1日から、販売開始しましたUFB(ウルトラファインバブル)クーラントシステムです。本装置は、研削水や切削水にウルトラファインサイズ(nm)からファインサイズ(μ m)の気泡を高濃度に付与できる装置です。「ニーズ」は、社内の研削効率を上げたいでした。通常は、砥石の種類を変え、研削水の圧力を上げる方法が思い浮かべますが、HP 等をヒントにバブルを試してみようと考えました。ところが、既存の装置はファインバブル(μm)の発生装置であり、バブルが短い時間で消失し、当社の供給経路が長い集中研削水供給システムでは、ファインバブルが消失して使えないと判断しました。

 そこで、ウルトラファインバブル(nm)を利用しようと考えました。UFB は水中でブラウン運動して、水面まで浮き上がることが無いため、長い時間水中に残存します。試験の結果、研削音の低下、研削効率の向上が見られ、今は集中研削水システムに装着し、約100 台の機械に研削水を供給しています。それならば、「用事」を考えたとき、市場も当社と同じ「用事」を持ち、「片付けたい」と考えるはずと外販に踏み出しました。このUFB クーラントシステムにより、機械の販売台数が減少するので機械メーカーに対し、また、砥石の寿命も延びるので砥石メーカーに対し、「破壊的イノベーション」であると考えます。さらに、切削加工においては、切削加工能率の向上、切削加工能率を同一にすると工具摩耗が約半分に抑えられ、工具費用の削減になります。最後に、「用事を片付ける」ことがビジネスに繋がると思い、活動している日々でございます。

 お読みくださり、ありがとうございました。
UFB クーラントシステムのHP です。
https://www.nittan.co.jp/products/ufbcoolant_001_017.html


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