「エネルギーを大切に !! 資源を大切に !!」

日本新金属株式会社 取締役社長 
岡田義一

   最初に、7月に発生しました「九 州北部豪雨」により被害を受けら れました地域の皆さま及び関係者 の皆さまには謹んでお見舞いを申 し上げますとともに、一日も早く日常生活を取り戻さ れることを願うばかりです。

 近年、ゲリラ豪雨に代表される短時間集中的な大雨、 時には雹(ひょう)や竜巻を伴う悪天候の発生も多く、 また、今回のように長時間にわたって地域集中型の豪 雨となり、一級河川が氾濫・決壊するケースも増えて きています。私の身近でも、2年前には、20年以上 勤務した工場の傍らを流れる鬼怒川が決壊し、なじみ の深かった町や田園風景が一気に濁流に飲み込まれた り、また、今年の九州北部豪雨の直後に、当社工場の ある秋田県でもやはり一級河川の雄物川が氾濫したり と、この自然の脅威に危惧するばかりです。

 このような災いは気候変動によるもので、疑いよう もなく産業革命以降の人類の発展とともに進行した地 球温暖化によるものです。20世紀から21世紀への 100年間で気温が0.7度上昇し、南極の氷が融ける ことなどによる海面上昇で南太平洋の美しい島国ツバ ルが水没するかもしれないと報道等で聞いても、まだ、 どこか遠い国の出来事とピンとこない部分もありまし たが、最近の大きな気候変動による身近な悪天候や災 害により、間違いなく地球が壊れ始めていると実感し ている次第です。(よって世界各国が協力して発行した 地球温暖化対策に関するパリ協定からの大国アメリカ の離脱表明には大きな失望感を抱くものでした。)

  この状況下、産業活動を行っている一人としては、 貴重なエネルギーを「大切に使う」、すなわち省エネに ついて今更ながらその必要性を強く感じているところ です。幸いにも当社は、設備技術系社員の努力により、 経済産業省から省エネの取り組み状況で「Sクラス(省 エネが優良な事業者)」の評価をいただいており、今後 もこの評価を継続できるよう全社一丸となって取り組 んでいきたいと思います。 話は少し変わりますが、「大切に使う」と言うことで は、当工業会で扱っているタングステンやモリブデン などのレアメタルも同様です。タングステン原料はそ の供給の8割を中国が掌握しており、2010年に勃 発した尖閣諸島問題に代表されるよう中国の影響一つでその供給状況は大きく左右されます。

 事実、この原 稿を執筆している8月末、今春から始まった中国政府 の環境保護査察の実施による鉱山や製錬企業の操業停 止に加え、中国南部での豪雨による鉱山の操業低下の 影響も相まって、原料の調達が非常にタイトになり、 かつ、APT相場が日々高騰を続けている状況ですが、 それだけで説明のつかない異常な急騰を示しています。 (7月末で$230程度が、直近で$280) このような状況下では、益々タングステンのリサイ クル推進の必要性を強く感じるわけですが、世界に目 を向けてみますと欧米のリサイクル率はともに約5割 と進んでいる一方で、我が日本はデーターにもよりま すが欧米の1/2から1/3程度と出遅れている状況 です。しかも、折角日本で集荷されたスクラップが、 海外(特に最大の供給国である中国)へ流出している ケースも散見されるとのことで非常に残念に思います。

  リサイクルを推進することは、国内でタングステン 資源を循環させることを意味し、これは原材料の輸入 依存度を低減させるばかりでなく、原料相場に左右さ れにくく、相場の変動を抑制する可能性さえもありま す。 また、鉱山で採掘される鉱石は、0.3%~0.5% 程度のタングステンしか含まれておらず選鉱された精 鉱でも50~60%程度です、これに対しスクラップ はさらに含有量が高められた高品位の原材料と言えま す。このためスクラップを出発原料とすることは、莫 大なエネルギーを消費する鉱山からの採掘や粉砕・選 鉱工程が不要となるばかりでなく、この後の製錬工程 での生産効率化も意味しており、冒頭述べました省エ ネにも大きく寄与いたします。 今日、日本国内で色々なリサイクル技術の開発や取 り組みが実施されていますが、当社も湿式製錬から粉 末までを一貫して製造するメーカーとして、日本のリ サイクル活動に大きな責任があると考えています。

 このため、多種多様なスクラップに対応できるよう常に 技術開発にも注力しています。 供給する側、消費する側、両者が一丸となって日本 のリサイクル率をまずは欧米並みに引き上げ、資源を 持たない日本の大切な資源として、ぜひスクラップの 有効活用を図り、資源循環型の社会を構築していきま しょう。


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