「タングステン製品大型化のための焼結体密度向上の検討」

株式会社アライドテック ○黒田 道雄
株式会社アライドマテリアル 池田

 
1.はじめに

 タングステン(以下,W)は金属中でもっとも融点が高く、過酷な条件で使用される。たとえば、放電灯用電極では超高温のアークに晒される陰極材や陽極材、抵抗溶接用電極では繰り返しの高温・高圧力が負荷される電極材などがある。これらの材料は、大径、肉厚といった大型化の傾向があり、それに伴い、焼結体の大型化が必要である。

 しかしながら、W は難焼結材料であるため、粉末冶金法による焼結体の大型化は、全体的に密度の低下を招くだけでなく、表面と中心の密度内外差を伴い、最終的に製品の品質ばらつきの原因になる。
 本稿では、W の焼結体密度の向上と内外差低減を検討し、製品(焼結体)の大型化を検討したので報告する。

2.焼結体密度の向上と内外差低減の検討

平均粒径1.3 〜 3.5μm の純W 粉末を用い、冷間静水圧プレスにより作製したプレス体を5 x 5 x 30mmに切出し、焼結に供した。焼結は、露点-50 〜 0℃の水素中、1200 〜 2000℃の各温度まで加熱速度1 〜10℃ /min で行った。2000℃においては、最大10hまで加熱保持した。
 
 得られた焼結体の酸素量、密度を調査した結果、密度は酸素量の減少とともに高くなり(図1)、粉末粒径が細かいほど、より低い温度で焼結を開始する傾向であった。また、露点が低い方が酸素量は少なく、密度は高い値を示し、2000℃で10 hまで加熱保持すると、露点が低い方が密度は高くなる傾向であった(図2)。

 以上の粉末粒径、焼結条件(加熱温度,加熱速度,水素露点)の検討結果をもとに、実寸法のプレス体を焼結し、全体密度および密度内外差を確認した結果、改善前では相対密度93%、密度内外差2%であったが、改善後では相対密度95%、密度内外差1%以下と、全体密度、密度内外差共に改善することができた。

3. まとめ

 焼結体の密度は、酸素量に大きく依存し、粉末粒径や焼結条件(加熱温度,加熱速度,水素露点)の影響を大きく受けた。粉末や焼結条件を適正に選択することで、実サイズの大きな焼結体の全体密度を高め、密度内外差を少なくすることができた。

 適正条件で作製し、密度を改善した焼結体を、棒状や板状に圧延した結果、とくに大径・肉厚製品では密度や組織ばらつき(≒特性ばらつき)を少なくでき、最終製品の寿命を改善することができた。さらに、従来は圧延途中で割れが発生することもあったが、改善後では割れ
の発生も少なく抑えることができ、大径・肉厚化により加工費低減も可能となった。


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