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技     術
  「銅モリブデン複合材料の量産化」
       ~品質管理の重要性~   (第128号会報)
株式会社  アライドマテリアル
永嶋 正敏

【銅モリブデン複合材が求められた経緯】
 今から約25 年前、銅モリブデン複合材が研究部門から量産移行し当時所属していた生産技術部門に移管された。当時は、パワー半導体用素子の放熱材としてモリブデンが使用されるのが主流だったが、更に放熱を必要とする市場が急速に広がり、熱特性に関する要求が製品用途毎に細分化されていった。銅タングステンはマイクロプロセッサの放熱板からさらにマイクロ波用の放熱板へと展開し、一方で銅タングステンより熱膨張は大きくとも熱伝導率が200W/m・K 以上の銅モリブデンが必要とされる市場が拡大し始めた。

【顧客要求に対応するために】
 放熱材として求められるのは熱特性が第一であり、熱伝導率、熱膨張率を顧客要求に合わせるため、タングステン、モリブデンをベースに銅を組合せ幅広い範囲をカバーするように開発を進めた(Fig.1)。

     FIg1 放熱基板材料 特性表

 しかしながら、熱特性が異なる材料は機械特性も異なり、要求された仕様にマッチした製造方法・条件の探求に取組む必要があった。当初、試作はいち早く提供するために、WEDM 加工を多く活用したが、品質を維持しつつ量産性、コスト低減が要求され、銅モリブデン製品の多くは圧延と打抜プレス加工で量産工程を検討した。プレス加工に用いる金型の設計は、従来の設計思想をベースに形状と材料特性の情報を加味し開発に取組んだ。

 銅量の異なる複合材では機械特性が異なり、プレス加工での製品化には数多くの試作と確認が必要であった。このとき、設計思想が事前にあったことや、試作を効率的に進めるための実験計画法等の品質手法を活用したことは、開発を進める上で重要なポイントであった。

【顧客との連携、標準化の重要性】
 たとえば、車載用のインバータ・コンバータ用放熱板は、表面積が大きい故に反り仕様が厳しい。圧延板の反りやうねりが顧客工程での製品接合時の反り変化と関連があることが分かり、圧延板はフラットでスムーズな形状に仕上げる必要があった。圧延ロールとワーク表面との加工点管理と出来ばえをコントロールしていくには、秀でた熟練作業者に頼る面があると当時痛
感した一方で、技能を「標準化・見える化」することの重要性も認識した。

【次の世代へ技術をトランスファーするために】
 次の世代に技術を継承していくには、技術・技能の標準化の推進と、作業者や技術者に色々な経験を積む機会を効率的且つ多く提供し、技術の着眼点、製品品質の感度を上げさせる必要がある。そのためにも設計・開発の検証、確からしさを繰返すことが「モノづくり」をしていく上で今後も重要な課題であると考える。すべての技術にかかわる苦心、経験は無駄になることが無く、現在の品質保証の業務に有効に活用できるよう、地道な、かつ、スピーディーな標準化を目指していく。
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