タングステン・モリブデン工業会

  6.用語解説

Ver 2.0
2006-6





 


6. 分析関係用語

6.1粒度試験方法

粒度:測定方法の種類と概要
     (方法の詳細はTMIAS 0001:1999を参照ください)

6.1.1 粒度試験方法

  平均粒子径は、試料に空気を透過して流速と圧力降下の測定から比表面積を求め、粒子径を算出する。透過法には、フィッシャー法とブレーン法がある。同一種類の原料粉末で、ロット間のバラツキの管理に有効である。

    【フィッシャー法(FSSS)】

  真密度の試料を試料管に充填して、試料高さより空隙率を求め、これに定圧空気を通過させマノメーター水位をキャルキュレータチャート上の数値で読み取り、その値を粒度としμmで表す。

    【ブレーン法】

   試料をセルに充填してベットを作り、これに空気を透過させ、透過に要した時間を測定して比表面積を求め、その値から粒度を算出する。

6.1.2 粒度分布試験方法

   いわゆる、粉末粒子径の分布を測定する方法である。粉末冶金において、成形体の充填密度や、焼結後の密度は、粒度分布に左右される。従ってこれらの管理に有効である。

    【光透過法】

   試料を液相中に均一に分散させた状態から粒子を沈降させ、時間によるその濃度変化を光の透過量によって測定し粒度分布を求める。

    【レーザー法】

   液体中に分散させた粒子をレーザー光で照射すると、それらの粒子は個々の大きさと形状により散乱光を検出器で測定する。

6.1.3 見掛密度試験方法

   一定容器に充填される質量を表す。成形型に所定の量を充填する為に必要な値である。また、金型設計にも必要な値である。

    【漏斗(カーニィ)による測定方法とスコット容積計による測定方法】

   試料を各々規定した方法により、一定容器に充填したときの質量を求め、単位体積当たりの質量を算出する。

6.1.4 タップ密度試験方法

   見掛け密度は自然落下により一定容器に充填された質量あるのに対し、自然落下では充填が不十分で、充填の空隙率にバラツキが生じる可能性がある場合にはタッピングを行ったあとに密度を測る。特に、成形型にタッピングを行って、粉末を充填するときに必要な値である。

    【タッピング法】

   試料をメスシリンダーに充填しタッピングを行い、タッピング後のメスシリンダーの目盛りの読みから、単位体積当たりの質量を算出する。


6.2 純分:鉱石、酸化物、金属粉末


6.2.1タングステン鉱石中の純分(WO3)

 JIS M 8128 酸分解法による。

   試料を塩酸と硝酸とで分解し,シンコニンを加えタングステン酸の沈殿を生成させてろ過した後,タングステン酸をアンモニア水で溶解しろ過する。ろ液は再び塩酸,硝酸及びシンコニンを加え,タングステン酸を再沈殿させてこし分け,強熱し酸化タングステン(Y)とした後,硫酸とふっ化水素酸で二酸化けい素を揮散させその質量をはかり酸化タングステン(Y)の含有率を算出する。
計算式  試料中のタングステン含有率は,次の式による。
       WO3=m2/m×100(%)

            WO3 : 試料中の三酸化タングステンの含有率[%(m/m)]
            m2 : 試料中の三酸化タングステンの質量(g)
            m : 試料はかりとり量(g)

6.2.2モリブデン鉱石中の純分(MoO3)

JIS M 8131 モリブデン酸鉛重量法による。

試料を硝酸と塩酸で加熱分解後シラップ状とし,温水に溶解後アンモニア水と塩酸とを用い,水酸化鉄などを沈殿させてこし分ける。ろ液は塩酸酸性とし,酢酸アンモニウムと酢酸鉛とを順次に加えて,モリブデン酸鉛を沈殿させ,その重量をはかり三酸化モリブデン(Y)の含有率を算出する。
計算式 試料中のモリブデン含有率は,次の式による。
         Mo=PbMoO4の重量(g)×0.2613/試料(g)×100(%)

            Mo=PbMoO4×0.2613
            MoO3=Mo×1.5003
            Mo  :試料中のモリブデン含有率[% (m/m)]
            PbMoO4 :モリブデン酸鉛の質量(g)
            MoO3 :試料中の三酸化モリブデン含有率[%(m/m)]

6.3 酸化物

6.3.1 三酸化タングステンの純分

       純分はIg,loss1), NVR3),Fe,その他の不純物2)の合量を100より差し引いた値とする。

6.3.2 三酸化モリブデンの純分

       純分はIg,loss1),NVR3),Fe,その他の不純物2)の合量を100より差し引いた値とする。
       注 1) 乾燥した試料を規定の温度条件に加熱したときの重量減量百分率。
       Ig, loss : Ioss on ignition(強熱減量)
       2) その他の不純物については,当事者間の協議により差し引く。

6.4 金属粉末の純分

  W粉末: Mo,Fe及びNVR3)成分のCa,Mg,Al,SiをICP測定し,NVR成分は,その値を酸化物に換算し,合量としたあと100より差し引く。
Mo粉末: Fe及びNVR3)成分のCa,Mg,Al,SiをICP測定し,NVR成分は,その値を酸化物に換算し,合量としたあと100より差し引く。

純分量の計算(例)
  Mo粉末・・・100−(Fe + NVR)・・・・・・W粉末と同じ(JIS 規格なし)。
   W粉末・・・・100−(F e+ Mo + NVR)・・・・JIS H2116に記載
  WC粉末・・・100−(Fe + Mo + NVR + FC)・・JIS H2116に記載
    NVR: Al,Mg,Ca,Si FC:遊離炭素

注 3) NVR
Non Volatile Residue(不揮発残分)のことで, Wまたは,Moが加熱下,ハロゲンガスと反応させると揮散する事を利用し,残渣の重量を測定する事で簡易的に含有不純物の総量を求める分析手法。
重量法が主流であった頃の定量分析手法で、不純物量が迅速・簡便に測定できることから多用された。
 近年は,精製技術が進歩したため,中間生成物以降では,鉱石に起因する不揮発残分は, Ca, Mg, Si, Alのほぼ4元素に限定されている。また分析技術の進歩に伴って分析精度の向上に対する要求も高まってきているためICP発光分光法で求めた。これら元素の測定値を酸化物換算して積算した値を用いて算出することもある。

参考資料及び文献

    1) 測定方法の詳細はJIS H1402,1403,1404中の不揮発分定量分析を参照ください。
    2) NVR成分4元素の詳細は,タンテン・モリブデン工業会 第4回技術発表会 予稿集の資料
を参照ください。

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