タングステン・モリブデン工業会

  1.歴史

Ver 2.0
2006-6





 

1.2 モリブデン

1.2.1 モリブデンについて

[歴史]

古  代:  古代ギリシャ・ローマの頃から鉛の様な輝きを持つ軟らかい鉱物をモリブドスと呼んでおり、鉛や黒鉛との区別は不明瞭であった。
1778年:  スウェーデンのK・W・シェーレによって独立の元素であることがわかり、その原鉱石モリブデナイト(輝水鉛鉱MoS2 )からモリブデンと命名された。
1782年:  初めて金属として単離された。
19世紀:  19世紀中は主として実験室で扱われただけで、第一次世界大戦までは金属としての需要はほとんどなかった。
1893年:  ドイツの化学者たちが,モリブデン酸カルシウムの還元によって92−96%純度のモリブデン金属を製造した。
1894年:  初めて鋼への添加元素として使用された。
1898年:  自硬性のモリブデン工具鋼が発売された。
1910年:  白熱電球のフィラメントサポートとして実用に供された。
 第一次世界大戦:ドイツが長距離砲の砲身に〈モリブデン鋼〉を使用しているとの報告が連合軍情報部に入り、アメリカはその情報の解明とともに、モリブデンの鉄や鋼に対する効果の研究を急いだ。まもなくこの情報は誤りであることが判明したが、これによって研究が促進されることになった。
1946年:  アーク鋳造法が初めてモリブデンに適応された。
1950年:  モリブデン−マンガン法が,セラミックスと金属のろう付けに開発された。
1954年:  TZM合金(Mo-0.5Ti-0.3Zr-0.03C)が,Climax社により開発された。
1955年:  モリブデンへのレニウム添加による延性改善が発見された。
1960年:  Mo-TZC合金が,GE社により開発された。
1960年代:  高強度モリブデン基合金を開発するため,(1)加工強化,(2)固溶強化,(3)析出強化の3種類の金属学的強化機構が利用された。最初に実用化された合金は,Mo-0.5%Ti合金であった。

[製法]

 原鉱をばい焼してから不純物を取り除くためアンモニア水に溶かしてパラモリブデン酸アンモニウムとし,これをか焼して酸化モリブデンとするか,ばい焼したものを強熱して酸化モリブデンを昇華させるかの方法がとられ,得られた酸化モリブデンを熱しながら水素で還元してモリブデン粉末を得る方法が最も普通に用いられている。

[モリブデンの用途]

1.特殊鋼

 モリブデンブリケットまたはフェロモリブデンも含む酸化モリブデンの形で高速度鋼をはじめとし、ステンレス鋼、耐熱鋼、強靭鋼、工具鋼等に広く使用されており、特に我が国はこの分野で世界的に大きな占有率を持っている。

2.モリブデン合金

 チタン、アルミニウム、ニッケルをベースにした合金及び母合金に使用されている超合金等がこれに属するが、その量は比較的僅少である。

3.金属モリブデン製品

 線、棒、板、機械加工品、組立部品等の形で照明用材料、電気電子用部品、高温炉用発熱体、サポート、ガラス溶融電極及び耐熱冶具等の分野に広く用いられている。

4.化成品

 各種モリブデン酸塩類として、触媒、顔料、肥料、薬品等の分野に使用されている。

               〔モリブデンの製品別使用量比率内訳〕

ステンレス鋼・スーパーアロイ

30

高抗張力低合金鋼

30

化学用途及びメタル

20

工具鋼・高速度鋼

10

鋳物

10

[参考文献]

日本大百科事典 小学館
世界科学大事典 講談社
化学大辞典   共立出版

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