トリア入りタングステンの規制に関して
タンモリ工業会 技術委員会
2012年4月27日
=現行法令=
1.原子炉規制法
放射線障害防止法で適用を除外している核燃料物質及び核原料物質については、原子炉等規制法において、放射能濃度及び数量(重量)により規制の対象を定めている。
以下、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令より抜粋
(最終改正年月日:平成一九年一二月一九日政令第三七八号)
第五章 核燃料物質、核原料物質及び国際規制物資の使用等に関する規制
(使用の届出を要しない核原料物質の放射能濃度等の限度)
第四十四条
法第五十七条の八第一項第三号に規定する政令で定める限度は、放射能濃度については、七十四ベクレル毎グラム(固体状の核原料物質にあっては、三百七十ベクレル毎グラム)とし、ウラン又はトリウムの数量については、ウランの量に三を乗じて得られる数量及びトリウムの量を合計した数量で九百グラムとする。
従って、使用の届出を要しない範囲は、下記となる。
核原料物質については、濃度規制は、液体又は粉体として74Bq/g、固体として370Bq/g、重量で純トリウム量として900/gを超えない範囲。
核燃料物質については、重量で純トリウム量として900/gを超えない範囲。
(但し、核原料物質、核燃料物質を使用するには、法令第六十一の三により国際規制物資の使用許可を受けなければならない。しかし、法令五十二条第一項の使用の許可を受けたものはこの限りではない。)
*トリア入りタングステン線・棒は、核原料物質扱いとなる。但し、ThO2濃度2.0%以下のトリア入りタングステン線・棒の放射性濃度に関しては、トリアの原材料による。トリウムがTh-232のみであれば71Bq/g、トリウム系列(放射平衡Th-232/Th-228)で構成されれば146Bq/g、トリウム系列(放射平衡Th-232/Th-228)・ウラン系列(放射平衡U-238/Th-230/Th-234)・アクチニウム系列(放射平衡U-235/Th-227/Th-231)のトリウムを含むと264Bq/gとなる。また、使用の届出を要しない範囲の上限は、固体として370Bq/gであって、トリウムがTh-232のみであればThO2濃度は10.37%となるが、文部科学省のホームページによると、Th-232の場合、含有率4.5%以上が規制の対象注1)となります。
注1)http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/genshiro_anzenkisei/1260837.htm
2.その他の規制
*ThO2濃度2.0%以下の場合は、労働安全衛生法の濃度規制(74Bq/g)注2を超えることは無く放射性物質に当らない。
注2)文部科学省 「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドライン」(以下「NORMガイドライン」という。(平成21年6月26日制定) これによると、精製トリウムは、Th-232を100%と考える。)
=NORMガイドライン=
NORMガイドラインとは、自然起源の放射性物質(Naturally Occurring
Radioactive Material)を含む物の利用時の被ばく線量測定及び措置に関するガイドラインであり、法規制とは異なる。
1.本ガイドラインの対象物について
本ガイドラインは、以下に示す原材料等であって、原子炉等規制値未満の物で、且つ、放射能濃度(1Bq/g、10Bq/g)及び数量(8000Bq、80000Bq)を超える物及び本ガイドラインの対象となる原材料等を使用した製品(輸入した製品を含む)を適用の対象としている。
(ガイドラインで指定する原材料等)
1)鉱石及び鉱物砂
モナザイト(モナズ石)、バストネサイト、ジルコン、タンタライト、リン鉱石、ウラン鉱石、トリウム鉱石、チタン鉱石、石炭灰
2)精製したウラン又はトリウムを添加した合金注3)又はガラス
注3)溶接電極棒や電気・電子部品等の原材料に使われている合金である。
2.トリア入りタングステン製品の規制レベルについて
文部科学省 放射線審議会基本部会 研究炉等安全規制検討会が作成した、「自然起源の放射性物質を含む物の利用時の被ばく線量測定及び措置に関するガイドライン」(平成18年2月6日作成)によれば、
1)原料及び製品が10μSv/年を越えない場合は、BSS規制免除レベル注4)となり、従来通りの対応で可能。
注4)BSS免除レベル:国際原子力機関(IAEA)による「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準」
2)利用者の被ばく線量が、10μSv/年を超え1mSv/年以下の製品を製作する場合については、下記の内容を含む表示を行うこと。
@製品中に自然放射性物質(ウラン、トリウム)を含んでいること
A利用者の被ばく線量が1mSv/年を越えないための取扱い上の注意事項
B製造業者等の名称及び連絡先
3)利用者の被ばく線量評価結果が、1mSv/年を越えると推定される場合は、その製造に使用する自然放射線物質を含んだ原材料等の量を減らす、使用の方法が限定されるよう改良する等の措置を講ずること。
4)製品が廃棄された時の一般公衆の被ばく線量が1mSv/年を越えると推定される物については、その製造に使用する
自然放射性物質を含んだ原材料等の量を減らす等の措置を講じた後に販売等行うこと。
(製品と利用者との距離:1m、想定利用時間:8760時間とする)
* 廃棄に関しては、製品と利用者との距離、想定利用時間が明記されているが、その他については明記されていない。
*NORMガイドラインに関しては、各工業会にガイドラインが提示され、各事業者が行う安全確保対策の実施状況等を踏まえ、本ガイドラインがよりよいものとなるように継続的に見直しが行われている。従って、このガイドラインに関しての詳細や疑問点に関しては、各工業会を通じ、経済産業省経由または、直接に文部科学省にお問い合わせをお願いします。
以上
【補足資料】
・放射線量率の測定及び被ばく線量の評価
(1)利用者に伴う被ばく量(mSv/年)
=DEX(1m離れた場所での1Bqあたりの被ばく量への換算係数[mSv/時/(Bq/m2)]
×製品中の放射能濃度(Bq/g)×製品重量(g)×想定利用時間(時/年)
÷[製品と利用者との距離(m)]2
(2)肌に密着して使用する製品の利用者に伴う被ばく量(mSv/年)
=DSKIN(1Bqあたりの皮膚被ばく量への換算係数[mSv/時/Bq]
×製品中の放射能濃度(Bq/g)×製品重量(g)×想定利用時間(時/年)
線量への換算係数1m
放射性物質名 |
DEX |
DSKIN |
トリウム |
1.8E-10 |
9.6E-09 |
ウラン |
2.7E-10 |
1.3E-08 |